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  • 2006年5月19日 日清ファルマは、ゲン・コーポレーション及び慶應義塾大学医学部と共同で農水省の研究補助金を受け、ピロリ菌による胃病変を軽減・予防する機能性食品の開発に関する共同研究を開��

日清ファルマは、ゲン・コーポレーション及び慶應義塾大学医学部と共同で
農水省の研究補助金を受け、ピロリ菌による胃病変を軽減・予防する機能性食品の開発に関する共同研究を開��

 日清製粉グループの日清ファルマ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:中村勝)は、株式会社ゲン・コーポレーション(本社:岐阜県岐阜市、代表取締役:渡邉周治)との共同研究について、農林水産省・農林水産技術会議の「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」として採択され、本年7月より3年間にわたって研究補助金を受けることが決定し、慶應義塾大学医学部消化器内科(日比紀文 教授)及び慶應義塾大学医学部信濃町キャンパス・リサーチパーク・上部消化管疾患研究室(鈴木秀和 講師)と共同で、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)による上部消化管病変(胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなど)に対する予防効果をもつ機能性食品の開発に関する研究を、本年7月から開始致します。

 本研究では、日清ファルマの持つ健康食品開発力と、ゲン・コーポレーションの鶏卵抗体などのバイオ技術に、慶應義塾大学医学部の長年にわたるピロリ菌研究と上部消化管(食道・胃・十二指腸)粘膜病変に対する診断・治療の実績が加わることで、ピロリ菌による疾患予防に有効なサプリメントや特定保健用食品などの機能性食品を開発し、商品化することを目指します。

 ピロリ菌は、胃粘膜に接着し炎症を起こし、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの発症に深く関与していると言われています。近年、乳酸菌など、胃内のピロリ菌を減少させる効果があるといわれる健康食品が注目されていますが、実際に胃粘膜病変予防に対する直接的な効果が確認されているものはないのが現状で、機能性食品についても病態抑制機序を科学的に実証することが重要です。

 日清ファルマとゲン・コーポレーションでは、これまでにピロリ菌の接着メカニズムに関する共同研究を行い、その研究成果を基に胃内でのピロリ菌の接着を阻害する素材として、日清ファルマは乳たんぱく由来のミルクカゼイン凝集物(FP-10)、ゲン・コーポレーションは鶏卵抗体(IgY)を開発しております。

 慶應義塾大学医学部消化器内科(日比紀文教授、鈴木秀和講師ら)は、昨年、ノーベル賞医学生理学賞を受賞したバリー・マーシャル教授(2002年に慶應医学賞受賞)との共同研究などを含め、ピロリ菌に関する基礎から臨床応用に至るまでの幅広い研究能力と実績を有し、特に慶應義塾大学医学部信濃町キャンパス・リサーチパーク・上部消化管疾患研究室では、新規胃病変の診断マーカーも開発中であり、本研究において開発される機能性食品素材のピロリ菌による胃病変の治療的・予防的効果を評価するためのコア技術として期待されております。

<研究開発概要>
名称 「ピロリ菌による胃病変の軽減・予防を目的とした機能性食品の開発」
実施体制 ●提案機関:日清ファルマ株式会社
●共同提案機関:株式会社ゲン・コーポレーション
● 連携機関:慶應義塾大学 信濃町キャンパス・リサーチパーク
         上部消化管疾患研究室
期間 2006年7月より3年間
<研究開発の背景>
ピロリ菌は、オーストラリアのバリー・マーシャル西オーストラリア大学教授とロビン・ウォーレン博士(両氏は2005年にノーベル医学・生理学賞を受賞)によって発見され、これまでの研究で胃炎、胃・十二指腸潰瘍及び胃癌の発症と深い関係があることが、さまざまな研究により明らかにされてきました。日本人のピロリ菌への感染率は約50%(推定で約6,000万人)と、欧米諸国に比べて高い水準にあります。近年、乳酸菌など、胃内のピロリ菌を減少させる効果があると言われる健康食品が注目されていますが、胃炎や胃潰瘍などの胃病変予防に対する直接的な効果が確認されているものはないのが現状です。

<研究開発の目標>
日清ファルマとゲン・コーポレーションは、共同研究により、ピロリ菌表面の「ウレアーゼ」という酵素が、ピロリ菌が胃表面に接着する際に接着因子として機能していることを発見しました。この成果を基に、ピロリ菌の接着阻害素材として、日清ファルマが開発したミルクカゼイン凝集物と、ゲン・コーポレーションが開発した鶏卵抗体は、ともに胃内でのピロリ菌の増殖を抑制する効果が確認されており、ヨーグルトなど幅広い機能性食品への応用が期待されております。

鶏卵抗体についてはすでにヨーグルトなど一部食品に利用されていますが、実用化に向けた準備段階のミルクカゼイン凝集物については、さらに研究を進めることで、工業的生産技術の開発と体制の整備を目指します。 また、鶏卵抗体についても、スウェーデンのカロリンスカ研究所により新たに報告された新規ピロリ菌抗原に対する鶏卵抗体を作成するとともに、その生産体制を確立し、ピロリ菌抑制効果をより高めることを目指します。 さらに、両素材の胃炎、胃・十二指腸潰瘍・胃がんの発症リスクの軽減効果について、慶應義塾大学医学部にて十分な基礎試験を基盤に、臨床的応用開発を目指します。 以上の研究成果を活用し、ミルクカゼイン凝集物及び鶏卵抗体を含有した機能性食品を開発します。

<期待される成果>
現在、胃炎や胃潰瘍発症者を対象に、抗生物質等3剤の投与によるピロリ菌の除菌治療が施されていますが、耐性菌の出現や再感染といった問題があり、近年では成功率も7割程度まで低下しています。本研究により、ピロリ菌による胃病変予防効果が確認された素材を利用した機能性食品が開発され商品化されることにより、上記のような除菌の際のリスクを冒すことなくピロリ菌を実質的に無害化することができるようになります。
<連携機関の慶應義塾大学信濃町キャンパス・リサーチパーク・上部消化管疾患研究室について>
本研究の連携機関である慶應義塾大学医学部消化器内科及び総合医科学研究センター・上部消化管疾患研究室は、ピロリ菌の分野において基礎から臨床に至るまで幅広い研究能力を有しており、現在は西オーストラリア大のマーシャル教授と共同研究協議をしております。今回の直接の研究責任者である鈴木秀和講師は、ピロリ菌に関する多くの研究業績があり、2004年には第10回ヘリコバクター学会にて「小林六造記念ヘリコバクター賞」を受賞するなど、日本国内のピロリ菌研究における指導的な若手研究者です。さらに、慶應義塾大学病院は日本では珍しいヘリコバクター外来を設置しており、同講師はその担当医師も勤めています。

<「産学官連携による食料産業等活性化のための新技術開発事業」について>
農水省が平成18年度から実施する競争的研究資金事業。農林水産・食品産業分野における新産業・新事業の創出を促進するとともに、直面する諸課題や政策課題の解決に資するため、民間企業等が大学・独立行政法人等の公的研究機関と連携して研究開発を行う提案公募型の事業です。本年は合計114件の応募があり、書類審査及びヒアリング審査を経て、12課題が採択され、農水省から研究補助金の支給を受けることになりました。