日清製粉グループ 青大豆の抗アレルギー作用を証明

(株)日清製粉グループ本社(社長:村上一平)は、グループの健康食品事業会社である日清ファルマ(株)(社長:白神俊典)と共に、静岡県立大学(木苗直秀学長)に2005年10月より寄附講座「日清製粉グループ・高次機能性食品探索講座」を設置し、免疫・アレルギー等に関与する新規機能性食品素材の解析と探索を行って参りました。今回、寄附講座の研究成果として、ある種の青大豆がアレルギー状態の緩和作用を示すことを細胞実験と動物実験で証明いたしました。

アレルギー緩和作用の指標になるTh1/Th2バランス(※1)の改善作用を示す機能性食品素材を探索するために、食経験のある豆類および雑穀をスクリーニングいたしました。その結果、青大豆の1系統であるエチゴミドリのアルコール抽出物が、細胞実験において優れたTh1/Th2バランス改善作用を持つことを明らかにしました。
 さらに、エチゴミドリの熱水抽出物は、アレルギーモデルマウスにおいても、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患マーカーである血液中のIgE値(※2)の上昇を抑制するという結果を得ました。今回の研究成果は、本年5月21日から23日まで、徳島市で開催される「第64回日本栄養・食糧学会大会」の中で5月22日(土)17:00〜発表されます。

※1 Th1/Th2バランス
Th1、Th2は外敵から私たちのからだを守る働きをするリンパ球の1種です。普通ですと、Th1とTh2の働き方は、バランスが取れていますが、あるきっかけで、Th2の働き方がTh1より強くなると、アレルギーになるといわれています。

※2 IgE
血液中のたんぱく質の一つで、普通ですと血液では微量存在するに過ぎません。アレルギーになると、血液中の量が増えて、ヒスタミンなどアレルギー反応を起こす物質が出てくるのを助ける働きをします。

●青大豆について
 通常の大豆も成熟する前は青くて、これを私たちは枝豆として食べていますが、収穫期には黄色く変化します。それに対して青大豆は成熟して収穫されるまで青いままです。 青大豆の流通量は、一般大豆に比べて少ないですが、青大豆には、クロロフィル、ショ糖、大豆オリゴ糖などの多くの成分が豊富に含まれます。今後、更なる機能性の解明が期待される食品素材です。

●参考資料1
青大豆エチゴミドリ抽出物がTh1/Th2バランスに与える効果
岡田典久1)、安井謙介2)、田邊宏基1)、福富竜太3)、石上葉子1)、伊勢村護1)
1)静岡県立大・院・生活健康科学研究科、2)日清ファルマ(株)健康科学研究所、3)日清製粉グループ本社
【目的】
アレルギー症状の軽減・予防効果を有する食品の開発を目的とし、豆類および雑穀約70サンプルの中から、Th1/Th2バランス改善が期待される素材をin vitro試験により探索した。
【方法・結果】
IFN-γのプロモーター領域を含むレポーターベクターをJurkat E細胞に組み込んだアッセイ系を構築し、ルシフェラーゼ活性に基づく転写活性を測定するスクリーニングを実施した。豆類および雑穀のエタノール抽出液を試験に供した結果、有望素材として青大豆(エチゴミドリ)を見出した。Jurkat E細胞を用いたReal-Time PCR、 ELISA法においてもエチゴミドリはIFN-γ発現亢進を示唆する結果を示した。一方、Balb/cマウスより採取した脾細胞にエチゴミドリエタノール抽出物を添加して培養し、培養上清のIL-4をELISA法にて定量したところ、終濃度30µg/mlでIL-4産生抑制効果が認められた。エチゴミドリ熱水抽出物でも同様の試験を行った結果、終濃度30µg/mlで抑制効果が確認された。続いてエチゴミドリをヘキサン、酢酸エチル、エタノールおよび熱水で分画し、各画分の抑制効果を検討したところ、エタノール画分、熱水画分に活性が認められた。
【結論】
青大豆エチゴミドリの抽出物はTh1/Th2バランス改善に有益な効果を及ぼす可能性が示唆された。

●参考資料2
青大豆エチゴミドリ抽出物のIgE産生抑制作用
安井謙介1)、岡田典久2)、田邊宏基2)、福富竜太3)、石上葉子2)、伊勢村護2)
1)日清ファルマ(株)健康科学研究所、 2)静岡県立大・院・生活健康科学研究科、3)日清製粉グループ本社
【目的】
青大豆の一種であるエチゴミドリのエタノール抽出物、熱水抽出物はin vitro試験でJurkat 細胞におけるIFN-γ発現の亢進およびマウス脾細胞培養系におけるIL-4発現の抑制作用を示し、Th1/Th2バランス改善に効果を有する可能性が示唆された。本研究ではOVAを感作したBalb/cマウスを用い、血清中のOVA特異的IgEレベルに対する青大豆エチゴミドリの効果を検討した。
【方法・結果】
腹腔内にOVAを投与した雄性Balb/cマウス(5週齢)にエチゴミドリのエタノール抽出物含有飼料(5%)と熱水抽出物含有飼料(5%)を4週間自由摂食させ、血清中のOVA特異的IgEを定量した。エタノール抽出物群、熱水抽出物群いずれも対照群に対しOVA特異的IgEが顕著に減少しており、さらに熱水抽出物群はエタノール抽出物群に対し有意な抑制効果を示した。この結果はエチゴミドリ熱水抽出物がアレルギー症状の軽減・予防に機能する可能性を示唆している。次に黄大豆であるフクユタカの熱水抽出物とエチゴミドリ熱水抽出物が及ぼす効果を比較した結果、フクユタカに対しエチゴミドリでOVA特異的IgEの有意な抑制が認められた。さらに関与成分の局在性を検討するためエチゴミドリの子葉、胚芽および種皮各部位の熱水抽出物を調製したところ、子葉でOVA特異的IgEを抑制する傾向が確認され、一方で胚芽と種皮は対照群と同等であった。現在、関与成分の解析を進めている。
【結論】
青大豆エチゴミドリは、IgE産生を抑制してアレルギー症状を軽減させる可能性のある機能性食品素材である。