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社会・環境レポート2007

CO2絶対量削減に挑む




日清製粉グループは、地球温暖化の防止のためには、
食品企業の積極的な取り組みが 必要だと考えています。
昨年、日清製粉グループでは 2010年度のCO2排出量を1990年度比で
8.6%削減することを宣言しました。
2010年度の目標達成に向けて、 日清製粉・日清フーズの社長と、
日清製粉グループ本社技術本部長が レビューを行いました。

  • 中村 隆司
  • 日清製粉株式会社
  • 代表取締役 取締役社長
  • 中村 隆司
  • 池田 和穗
  • 日清フーズ株式会社
    代表取締役 取締役社長
  • 池田 和穗
  • 山田 幸良
  • 株式会社日清製粉グループ本社
    取締役 技術本部長
  • 山田 幸良

地球温暖化による気候変動の影響が
実際に体で感じられようになっている

山田
地球温暖化への対応、特に京都議定書で締結されたCO2の削減は、食品企業にとっても重要な課題です。私たちは、どのような点に注目し、どのように削減に取り組んでいるのかを、今日は改めて考えてみたいと思います。
中村
オーストラリアでは有史始まって以来という干ばつ被害で小麦やその他の穀物に壊滅的な被害が出ましたが、地球温暖化は人類の食糧資源の確保と密接にかかわっており、私たち食品企業が受ける影響も大きいものがあります。
池田
食品企業はこれまで、商品価格や安全な製品づくりに努力を傾けてきました。こうした努力は当然、今後も続けなければなりませんが、もう一つ、気候変動による食糧資源への影響から「量の確保」という問題が浮上しています。世界規模の中で量をどう確保していくのか。さらに、世界の人口増が加わり、食糧の確保は人類にとって最大の課題となっています。これに対して、一企業としてではなく、世界全体でどう取り組むかが求められています。
中村
地球温暖化による影響を考えるとき、食品企業の経営に与える影響を考えがちですが、私たちの孫やその次の世代にこれまで私たちが享受してきた環境を残していくことをまず考えるべきだと思います。地球温暖化に対して企業経営の立場から努力することはもちろん、1人の人間として向き合い、「このままで本当によいのか」という危機感をもたなければならないでしょう。
池田
おそらく“地球人”が誕生してから、現在が最大の危機なのではないでしょうか。厳しい氷河期さえも生き残ったホモサピエンスが、自ら生み出した文明によって、より深刻な危機を招いてしまった。そういう意味では、企業というよりは人類という目線で、どうやって課題を地球人として克服していくのかは重要なことだと思いますね。
山田
現在は、京都議定書の第一約束期間が来年に迫ってきたということと、気候変動の影響を皆さん実際に体で感じられるようになってきました。それほど影響が深刻だということでもありますが、実感をさらに具体的な行動に転化していくような試みが問われていると思います。ですから、食品企業だからとか、規模の大小にかかわりなく、CO2削減は、すべての人たちの役割であるという認識が広まったからではないでしょうか。
中村
日清製粉でも、具体的なCO2削減の施策について議論が進められていますが、その前提として、なぜCO2を削減するのか、そのことを皆できちんと認識しようと言っています。というのも、CO2の削減は必ずしもコスト削減には結びつかないため、経営効果が見えにくい。だからといって、取り組みが中途半端になってはいけないので、そのために考え方を共有しておこうというわけです。
池田
2007年6月のハイリゲンダムサミット(主要国首脳会議)では、「地球規模での目標を定めるにあたり、2050年までに地球規模での排出を半減させることを含む、EU・カナダおよび日本による決定を真剣に検討する」、という合意が得られましたね。京都議定書では2012年までに6%の削減にとどまっていますが、これは決してCO2削減についてゆっくりとした対応でもよいというのではなく、世界の人々が共通のコンセンサスをもてるようにするためだと理解しています。ステップバイステップで積み上げ、半減していこうということですね。

食品企業の使命として、 CO2絶対量削減に挑む

山田
日清製粉グループは2006年2月に、グループ全社で2010年度までに1990年度に比べてCO2排出総量を8.6%削減することを宣言しました。企業のCO2削減目標ではよく「原単位」が用いられ、原単位で議論がなされているケースが多い。しかし、これでは企業側のエクスキューズ(言い訳)にもなり得ます。景気がよくなり、生産量が増えれば絶対量も増えてしまうからです。その点、絶対量での削減は、エクスキューズできない。非常に厳しい努力が求められますが、やらねばならないことであると考えています。
池田
日清フーズでは10.4%の削減目標を掲げています。画一的に何かの策をとるのではなく、改善点を一つひとつチェックして行動計画を立て、そのうえで毎年、達成度をチェックすることで、それが結果的に経営効果となって表れるのではないかと思います。
山田
1990年度のグループ全体のCO2排出量は約20万トンで、2006年度には約19万トンまで削減してきています。2010年度にはこれを18万トンにまで減らさなければなりません。2006年の宣言は、社会への日清製粉グループとしての実行宣言。約束ですからなんとしても達成しなければなりません。
中村
改善余地は確かに大きいですね。日清製粉ではスピードとコストを勘案しながら、打てる手はどんどん打っていこうとしています。環境技術は今、まさに日進月歩で発展しており、削減効率の高い技術などが登場すれば積極的に取り入れています。たとえば省エネ機器や設備の導入、ボイラーのガス化といった燃料転換、物流の効率化の推進などです。
池田
地球温暖化への取り組みには、2つの視点が必要だと思うのです。つまり、効率的な設備の導入を通じた効率的な削減とそれを積極的に利用していこうとする風土です。
中村
そうなんです。オイルショックのあった昭和50年当時の第一次省エネ運動のことを思い出します。あの当時は、電気料金が高騰して、経営を圧迫するほどになりました。そこで、電力を効率的に使うにはどうしたらよいか皆が知恵を絞り、そうした業務改善の考え方が組織の中に組み込まれ、風土となっていきました。これは経営的に大きな成果でした。日清製粉グループにはそうした取り組みを受け入れる風土がありますから、目標達成に一丸となれるのです。
池田
食品企業はやりやすいと思いますね。気候変動の影響について、氷河の消失などはなかなか実感できませんが、食べ物が減っていくというのは非常にわかりやすい。人類にとって食べ物はもっとも敏感なバロメーターですから。そういう意味では、食品企業は地球温暖化防止についてメッセージを発しやすく、社会的な使命の一つだといえるのではないでしょうか。

座談会

グループ各社の積極的な取り組みが大きな成果を生んでいる

山田
日清製粉の場合、工場で使われるエネルギーの約90%は電力ですよね。
中村
はい。千葉工場ではすでにコージェネレーションで必要電力を賄っています。非常に効果があるため、ほかの大型工場への導入も検討しているところです。こうした取り組みは、たとえば蒸気をうまく活用できるのかといった課題もあるので、工場単体で完結してしまうのではなく、近隣工場や協力会社を巻き込んだ形にしていくのがいいようです。また工場は1日24時間、フル稼働しているわけですが、機械が停止すると、その分だけ無駄なエネルギーが必要になります。ですから、休止したり壊れたりしない機械を開発することも、CO2削減に直結します。
山田
たとえば日清製粉で使われるエネルギーは、小麦などの破砕、小麦粉の空気輸送、その他で、それぞれ使用されています。顕著な改善効果をあげたのが空気輸送部分です。
中村
製品にもよりますが、小麦から小麦粉になるまで平均して7回も空気輸送が行われており、この過程をいかに効率的にするかがエネルギー効率の改善、つまりCO2の削減に結びつきます。そこで、空気輸送を最適に制御するためにシステム「ニューマエコ※1」を開発。これにより、エネルギー消費量は40%ほど減少しました。
山田
そのほかにもオリエンタル酵母工業のメタンガスによるコージェネレーションシステムの開発(コラム2参照)や、NBCの天然ガスサテライト(コラム3参照)などがあり、こうした取り組みがグループ全体にもよい影響を与えています。
  • ※1 ニューマエコは、日清製粉グループ本社が開発、日清エンジニアリングが販売する空気輸送ブロワの省エネルギー最適化制御システムです。日清製粉の工場で使用され、約40%の省エネルギー効果が見られました。


お客さま、お得意先さまとともに CO2を削減する

池田
日清フーズの場合、主力製品であるパスタを環境の視点から見てみると、消費者がご家庭で調理されるときのCO2削減にも配慮しなければなりません。製造段階ではボイラーのガス化やコージェネレーションシステムの導入、空調などの熱源の一本化、容器包装量の削減など努力を行っていますが、調理段階も含めるとちょっと状況が変わってきます。日清製粉グループの算定によると、パスタのライフサイクルでCO2の排出量を見ると、製粉工程で7〜8%、家庭での調理段階で70%という比率になるのです。
山田
つまり、調理段階でのCO2排出量の削減に踏み込まないと、全体的な効果がでないのですね。とするならば、「CO2ダイエット」という目線での商品開発が必要になります。
池田
ご家庭でお湯を沸かしてスパゲティをゆでる時、だいたい7〜12分ぐらいかかっています。これをなんとか短くして、エネルギー消費量を減らしたい。そこで特製の容器を開発していただき、この容器に200ccの水とスパゲティを入れ、電子レンジで5分間加熱するとゆであがる製品を開発しました(コラム1参照)。調理に使うエネルギーは1/10、CO2の排出量は1/4に低減します。これからはご家庭の中でも、地球温暖化は話題になっていくでしょうから、安全、おいしさ、調理の簡便化とともに環境配慮型の製品もご提案していきたいですね。
中村
製粉事業の場合BtoBなので、パンや麺、お菓子の製造会社やリテイルショップなどのお得意先さまがそういった新しい商品をつくるのに、どういったお手伝いができるのかを考え、ご提案することもこれからは必要でしょうね。


キャップ・アンド・トレード方式の 社内排出権取引制度にも挑戦していく

山田
そのほかにも当社グループでは、キャップ・アンド・トレード(Cap And Trade)※2方式での社内排出権取引も予定しています。日本では2003年から取り引きの試行が始まっており、排出量のトン当たり取引価格の設定など具体的な手法について検証が続いています。当社グループでは、CER※3と組み合わせた制度を準備中で、京都議定書第一約束期間の開始年の2008年に運用開始を目指しています。
中村
地球温暖化、特にCO2の削減は地球全体、そして全人類の課題です。それを前提にしてマーケットやステークホルダーとの関係が成り立っていくとすれば、CO2削減目標を達成することで、ステークホルダーの皆さまの声に応えていかなければならないでしょう。
池田
食とは、動物や植物により私たち人間の生命を維持するものです。その動物や自然を守り、人々に命を与え、幸せを与えることが食品企業の社会的使命だと考えます。おいしさや安全な製品の開発にとどまらず、より大きな視点から社会的課題に取り組んでいく必要があります。食を通じたあらゆる幸せを社会に提供していきたいですね。
山田
環境の取り組みといえども、経済合理性を抜きに語ることはできません。積極的に経済合理性を発揮するなかで、新技術や新しい取り組みが生まれると思います。CO2削減を経営の重要課題の一つとして認識し、課題解決に向けてイニシアチブをとっていくことが経営者の務め。今後は、日清製粉グループとしてのさらなるCO2削減に向けたスキームづくりを進めていきたいと考えています。

  • ※2 CO2排出量の削減を促すために京都議定書では排出権取引を認めており、その具体策として注目されているのがキャップ・アンド・トレードです(CAT)です。CATは、各国の政府が温室効果ガスの総排出量を定め、それを企業などに排出枠として配分し、そのうえで企業間などの移転(取得)取引を認めるものです。
  • ※3 CERとは、京都議定書が採択した京都メカニズムのうち、クリーン開発メカニズム(CDM)に基づいて発行されるクレジット(排出権)。企業が自主目標を達成するために活用することができます。

日清製粉グループの社内排出権取引のモデル図
モデル図



column1

電子レンジで水から5分
「マ・マー レンジにおまかせスパゲティ」

スパゲティ
N型スパゲティ専用容器にスパゲティと少量の水を入れ、電子レンジで5分間加熱調理するだけでゆであがるスパゲティです。5分という短時間を実現した理由は、断面がN字型になった形状にあります。調理時間が大幅に短縮されたことで、省エネにもなり、水の節約にもつながる製品です

column2

オリエンタル酵母工業の取り組み
酵母の発酵時のメタンガスをコージェネレーションシステムに応用

オリエンタル酵母工業の排水設備
オリエンタル酵母工業の排水設備

製パン用イーストを提供しているオリエンタル酵母工業では、従来のメタン発酵処理では良好に処理することが難しかったイースト培養液であっても、メタン発酵処理で初めて良好な処理ができるシステムを開発し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)補助事業として大阪工場に導入しました。メタンガスはCO2の21倍の温室効果をもたらすとされ、その抑制は大きな課題となっていました。そこで、通常は天然ガスで適用されるコージェネレーションシステムのエネルギー源にメタンガスを利用することで、CO2の排出量削減に成功しました。日清製粉グループでは、こうした取り組みをCO2の排出量削減のみならず、新たなクリーンエネルギーも同時に得ることを目指し、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism=CDM)にも積極的に取り組んでいます。インドネシアの食品工場におけるメタンガスのコージェネレーションシステムの活用で獲得した排出権は、社内排出権取引などを活発にするための基盤となっています。

column3

NBCの取り組み
LNGサテライト(液化天然ガス気化設備)導入でCO2削減へ

NBC山梨工場
NBC山梨工場

メッシュクロスと成形フィルターの製造・販売をしているNBCでは、CO2削減の取り組みとして、山梨都留工場(山梨県都留市)の生産用燃料を2007年4月1日より、液化天然ガスに転換しました。これは、ガス導管のない同地域にて天然ガスの利用を可能とした、「LNGサテライト(液化天然ガス気化設備)」を導入することで、山梨都留工場の年間における二酸化炭素排出量を2003〜2005年度平均CO2排出量に対し409トン(約7%)削減させるものです。ほかにも、24時間稼動している生産工場の光熱費が課題となっていましたが、インバーターを利用した照明器に切り替えることで、照明のエネルギー効率を格段に上げることに成功しました。これは、既存の技術を利用した効率化技術であり、それを実証したことが高く評価されています。このNBCの効率化技術は、オリエンタル酵母工業などのほかのグループ会社でも採用され、日清製粉グループ本社の小網町ビルや日清製粉の千葉工場などでも全面的に採用しています。

 

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