食品企業である日清製粉グループにとって、
世界の食糧問題にかかわる活動は、社会への責任として不可欠なものです。
当社グループでは、飢餓と貧困の撲滅に取り組むWFP(World Food Programme 国連世界食糧計画)を
支援するため、
2005年9月に社内にWFP推進組織事務局を設置し、募金活動などを開始しました。
今回は、WFPを支援している国連WFP協会のお二人をお招きし、
「食の担い手として、私たちができること」をテーマに座談会を開催しました。

世界の食糧問題の現状
- 蟹江
- 現在、世界には8億5千万人もの飢餓に苦しむ人々がいます。飢餓の原因は、一つには温暖化などの気候変動による干ばつや洪水、地震や台風などの自然災害が挙げられ、もう一つは戦争や地域紛争などの政情不安やインフラの遅れ、爆発的に広がっているHIVなどの人為的問題があります。この2つの要因が重なることで、深刻な飢餓が起こっているのです。
- 宮崎
- 飢餓というと、食糧不足を想像されがちですが、実は世界全体でみると需要と供給のバランスはとれている。食糧はあるのだけれども、それがちゃんと平等に行き渡っていないところが問題なのです。この食糧の偏在の解消が、WFPが長期的に取り組まなければならない重要な方針であり、世界中の豊かな国がそうでない国に、どれだけのことができるのかが求められています。
- 中沢
- これまでテレビの中でしか知らなかったことが、こうしてリアルに感じられると、食品企業に身を置く者として何もしないでいいのか? 何かしなければ、という気持ちが強くなりますね。
- 宮内
- 飢餓は次世代を担う子どもたちにとっても深刻な問題です。例えば、今、飢え死にしそうな人がいれば、当然その人たちに食糧を供給しなければと考えます。ただ、それで飢餓が解決するかというと、そうではない。「支援」は最終的には教育や国の開発につながるものであって欲しいと思います。「災害時の緊急支援」「初等教育」の両方が重要ではないかと思うのです。5年10年続けてみて、たとえば小学校に通う人たちが増え、字が書けなかった人が書けるようになる。その人たちがやがては大人になって親になり、それが2代3代続いていくうちにその国の力になってくる。そういう道のりがあることが見えれば、より一層社員も「人を本当に支援したい」という気持ちになるのではないかと思うのです。
- 蟹江
- まったくその通りだと思います。この10年間のWFPの活動をたどってみると、実は「学校給食支援」というのが非常に大きなウエイトを占めています。現在、世界で約2,000万人の子どもたちが学校給食の援助を受けています。これは単なる食糧支援ではなく、「学校に行くきっかけをつくる」ことで識字率のアップにもつながっています。特に、貧困に悩む地域では、女性は家庭内で労働力として扱われがちですが、学校給食プログラムにより、進学率・識字率が上がっています。識字率の上昇は、国力を上げるためにも重要なポイントです。
- 宮崎
- WFPは、「FOOD FOR LIFE(命を救うための食糧支援)」「FOOD FOR EDUCATION(学校給食)」はもちろんですが、さらに、その先に「FOOD FOR WORK(労働の価値に対する食糧支援)」があり、労働教育を行うことで、人々の自立支援をしています。この3つの基礎を足がかりに、その後はさらに「FOOD FOR DEVELOPMENT(発展のための食糧支援)」「FOOD FOR GROWTH(成長のための食糧支援)」と、その国の経済発展につながるような食糧支援を行うことを目指しています。
- 稲垣
- 昨年から、AC(公共広告機構)が給食プログラムのテレビCMを放送していることもあり、WFPの活動や学校給食プログラムの認知度がアップしていると感じます。こうして社会への露出が増えることと、私たちのように企業の中の浸透とを同時に図っていくことで、より理解を深めていくことができるのだと思います。豊かさと貧しさ。このアンチテーゼは、今の日本にすごく必要だと思うので、もっとアピールされてもいいのではないでしょうか。
- 宮崎
- 学校給食プログラムは食糧支援だけに限りません。例えばブータンでは、プログラムの一貫として、調理釜を毎年いくつか寄贈しています。薪を使った非効率かつ不衛生な調理を続けていたので、効率がよく煙が出にくい釜を、と考えたのです。一方で、アフリカのガンビア共和国のように、飢餓・貧困の状況すら把握できておらず、どこに何を支援してよいかわからないという支援以前の国もあります。こうした国々へは、まずは調査費用を援助することから始めないといけないでしょう。そのためにも、まずは現状を理解していただく、知っていただくことが大切だと思います。
初めはいろいろやってみることも必要
社員の自主的な活動を全面的に支援します
- 中沢
- 私たちWFP推進メンバーは、社内にWFP支援を根付かせるために、何か工夫が必要なのだろうと感じています。昨年度、社内で募金活動を展開したのですが、お金を集めるということの難しさを感じまして、自主的に参加してもらえるような企画と仕組みがなければと思いました。そこで、今年度は、より多くの社員に参加してもらえるよう、バザーを開催してその売り上げを寄付するとか、バザー会場でのパネル展示などを検討しています。
- 宮崎
- それはいいアイデアですね。協会には貸し出し展示用のパネルがありますから、いつでもお貸し出しできますよ(笑)。
- 稲垣
- ありがとうございます。日本から見ると、アフリカで起こっている問題は、遠くの国の出来事のように思われがちです。こうした問題を身近に感じてもらうためにも、パネル展示は有効だと思いますね。
- 中沢
- 昨年度、社員全員にWFP支援の普及・啓発のため携帯ストラップが配付されました。推進メンバーの中では、ストラップを購入することで寄付につながるような仕組みも考えています。全社的な活動も重要ですが、こうした身近な活動のほうが、社員も参加しやすいのではないでしょうか。先ほどの調理釜のように具体的なものに対して支援することのほうが、わかりやすいです。
- 蟹江
- 例えば会社と共同しながら本日のような飢餓問題を考える日を設けて、皆さん方には1日分の昼食代をご寄付いただいてもよいかもしれません。ゴルフコンペなどのチャリティ化、福利厚生施設でサービス利用時の利用料をご寄付いただく仕組みなど、開発したらいかがでしょうか。
- 宮内
- 今はまだ、社内の体制も発足したばかりですから、ここ1、2年は試行錯誤をしていろいろやってみてもよいと思います。社員が自主的に何か行動を起こしてくれるというのは、会社として喜ばしいことです。私たちは「信を万事の本と為す」を社是としています。社会に対する「信」という意味からも、当社グループは全面的に、社員の自主的な行動を支援していきます。
- 稲垣
- 現在、当社グループのWFP推進組織事務局のメンバーは18人です。1年ごとにメンバーを募って、5年続ければ約100人の理解者が得られます。この活動は続けることが大切だと思うのです。もちろん、各事業会社にも活動を広げていきます。また、当社グループの社会貢献の取り組みの成果に応じてマイレージのようにポイント化し、WFP支援につなげるという仕組みも構想中です。
- 宮内
- 先ほども申しましたように、当社グループの活動は、まだ動き始めたばかりです。独りよがりにならないように、皆さまのご意見をいただきながら、地道に息長く、メリハリをつけて進めていきたいと考えています。
- 蟹江
- 本日はとても有意義な座談会でした。協会としても、企業の皆さまから大きなパスをいただいたという気分です。冒頭でも申し上げましたが、世界では8億5千万の人々が支援を求めています。どうぞ、これからもよろしくお願いします。
◆国連WFP協会はWFPの日本における民間協力窓口です。

- 中沢 吉美
- 日清製粉グループ本社
総務本部知的財産部
(WFP推進メンバー) - 「私の職場では紙を大変多く保管し、消費します。温暖化が農業に与える影響を考えると、その一因に遠からずかかわっているという意識があります。何かしなければと思う毎日です」

- 稲垣 泉
- 日清製粉グループ本社
総務本部広報部長
(WFP推進組織事務局長) - 「学生時代の夏休みに東北の農村で農作業の手伝いをしたことがあるのですが、都市と農村の格差を感じたのを覚えています。最近では、ネパールとアメリカを訪れ、国による格差を実感しました」

- 宮内 泰高
- 日清製粉グループ本社 常務取締役 総務本部長
- 「私たち団塊の世代は、飢餓を実体験していませんが、親の世代は戦時中の食糧難時代を経験してきたので、ごはんを1粒でも残そうものなら、粗末にするなとよく怒られたものです」

- 蟹江 雅彦 氏
- 特定非営利活動法人
国際連合世界食糧計画WFP協会
専務理事 - 「私の場合、記憶の原点をたどれば、日本はとてつもなく貧しかった。食べるものも、着るものもなかった。そういうところがすべての原点であり、そういう世界から脱したいという気持ちは強いですよね」

- 宮崎 謙介 氏
- 特定非営利活動法人
国際連合世界食糧計画WFP協会
シニア・アドバイザー特命プロジェクト担当 - 「子どもの頃、コッペパンや脱脂粉乳などを援助してもらった経験が、今の仕事につながっている気がします。今の日本は平等な社会ですから、富める者が貧しい者に分け与えるという文化が育っていないと感じます」
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