シリーズ・イタリアンの巨匠
第8回 「アルポルト」オーナーシェフ 片岡 護
素材を活かす、イタリア料理のヘルシー思想〈後編〉
日本の食材にはヨーロッパの食材にはない良さがあります。それをどうやって組み合わせてイタリア料理に結びつけていくかというのが私の今の課題です。

渡辺: 片岡さんは「和の素材でイタリアン」という本もお出しになっているほどですが、和の素材で作るイタリア料理についてお話いただけますか。
片岡: はい。自分自身、日本料理がとても好きなので京都や金沢、それに北海道などにもよく行くんですが、やっぱり日本の食材というのはヨーロッパにはない良さがたくさんありますよね。
そういったものをどうやって組み合わせてイタリア料理に結びつけていくかというのが私の今の課題です。
アクアパッツァの日高さんなどもやられていますけど、日本人にしかできないイタリア料理を作ろうという文化が根づいてきたんじゃないでしょうか。
渡辺: 具体的にはどんな食材をお使いになっているんですか?
片岡: そうですね…うどを使ったり、たけのこを使ったり、せりやみょうが、里いもなど、季節によってさまざまです。魚はイタリアにもいっぱいありますから、やはり野菜が中心です。
渡辺: 日本の野菜をイタリア料理に使う際のポイントなどはありますか?
片岡: やはり、そういった日本の食材を何と組み合わせて、どうやってイタリア料理に結びつけていくかというのがポイントでしょうね。どういうものが自分の中から出てくるのか、自分自身が興味津々です。
前にもお話しましたが、私の場合は日本料理や中華料理などを実際にいろいろ食べて、そこから学ぶことが多いです。
でも、食べてるときはあれこれ分析などしてはいけない。料理を食べているときはひたすら感動することが大切です。「この季節、こんなに美味しいものが出てるんだぁ…」と、そこでは感動しながら食べておいて、あとで自分がその食材に向かったときに、その感動をどうやって表現しようかと考えてみる。そのときに新しい料理って生まれてくるんだと思います。
中華料理でラーメンを作ろうとすると、スープをとるだけで大変です。でもイタリア料理は、プロの味が5分間でできる。とても簡単だし、とてもヘルシーなんです。

渡辺: この対談ページを読んでいる方々に向けて、家庭でイタリア料理を作るときのアドバイスなどありますでしょうか。
片岡: はい。まず言えるのは、イタリア料理というのはとても簡単だということです。
冷蔵庫に食材が余っていたら、それがたまねぎでも、にんじんでも、かぼちゃでも、ピーマンでも、何でもできるんです。手間なんていりません。
たとえばパスタは、にんにく、オリーブオイル、鷹の爪があれば、それでできちゃう。その中にキャベツを入れればキャベツのパスタになるし、たまねぎを入れればたまねぎのパスタになるわけです。
中華料理でラーメンを作ろうとすると、そうはいきません。まずスープをとるだけでもすごく時間がかかって、それに何を合わせて何を入れてといっても家庭ではできないですよ。
でもイタリア料理は、プロの味が5分間でできる。これがイタリア料理の特長なんです。
だから、皆さんぜひご家庭でもっとイタリア料理を作っていただきたいですね。
イタリア料理ってとても簡単だし、とてもヘルシーなんです。
渡辺: これを揃えておくとイタリア料理が作りやすいという調味料や食材はありますか?
片岡: いちばんはオリーブオイルですね。そして、にんにく、鷹の爪、パセリ。これだけあれば基本的にはOKだと思います。
さらに揃えるとすれば、アンチョビ、ケッパーといった保存食でしょうか。
渡辺: 置いておいても腐らないし、常備しておくといいですよ、ということですね。トマトの缶詰とか。
片岡: そうですね。そうやってストックしておくと、もう何でもできちゃう。これがイタリア料理の良いところです。
渡辺: 冷蔵庫に何か余ってて処分したいなと思ったら、それを今のこの材料とパパッと合わせればパスタができちゃうということですね。
片岡: そうです。だからイタリア料理は家庭でできる料理であり、だからイタリア料理は家庭料理が美味しいんです。
どうしてイタリア人はおもてなしをするときに自分の家に人を呼ぶのか、わかりますか?
…それは、まず家が広いから(笑)。
そして、料理が簡単にできる。しかも自分の表現ができるからです。
各家庭それぞれに“マンマの味=おふくろの味”があって、自分の思い通りに料理していいし、細かいことにこだわる必要なんて全然ない。自由なんですよ。そこにイタリア料理の良さがあるんです。自分を表現する、個性の料理なんですね。
渡辺: なにもレシピ本に書いてある通りに作る必要なんてないんですよね。
片岡: そう、全然ない。私が私の本の中で言っていることはあくまでも参考にしてもらえばいいわけで、あとは自分の世界を築いてくれればいいわけです。
渡辺: 片岡さんは本でこう言っているけど、私は最後にこうやりたいということがあったら、どんどんやればいい。そうすると自分の料理になるということですね。
片岡: そうです。それを人が評価するかしないかは別問題で、それを楽しむことが大切。料理ってそういうものだと思います。
片岡護
レストラン「アルポルト」オーナーシェフ
日本を代表するイタリア料理界の巨匠。ミラノの日本総領事館で5年間修業した後、「小川軒」「マリーエ」を経て1983年、東京・西麻布に「アルポルト」を開店。日本におけるイタリア料理界の草分け的存在であり、イタリア料理のアドバイザーとしてテレビや雑誌等でも広く活躍中。「和の素材でイタリアン」(講談社)など著書も多数出版されている。


渡辺陽一
レストラン「パルテノペ」総料理長
昭和59年に渡伊し、在ローマバチカン日本大使館・大使付料理長に就任。その後10年間に渡る修業を重ねイタリア国内のリストランテの料理長をも経験。帰国後も第一線のイタリアンシェフとして活躍中。得意とするのは南イタリアの伝統的な地方料理、特に6年間滞在経験のあるナポリの郷土料理。
この対談は、イタリア料理レストラン「アルポルト」で行われました。
イタリア料理 アルポルト
港区西麻布3-24-9
TEL:03-3403-2916
営業時間:昼11:30〜15:00(L.O.13:30)/夜17:30〜23:00(L.O.21:30)
定休日:月曜
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