シリーズ・イタリアンの巨匠
第11回「ポンテベッキオ」オーナーシェフ 山根大助
山根流イタリアンとは?〈前編〉
イタリア料理をやる人で“粉”を使うのが嫌いだという人はいません。みんなパスタをつくってみたいし、ピッツァもつくってみたいんですよ。
渡辺: 今日はなんばパークス内の山根さんのお店、ピッツェリア「スッド ポンテベッキオ」でお話をお伺いします。どうぞよろしくお願いします。
山根: こちらこそ、よろしくお願いします。
渡辺: ピッツァのお店というのは山根さんの展開の中ではちょっと異質かなと思ったのですが、いかがですか?
山根: いやいや、とても大きな存在ですよ。ピッツァはずっと昔からやりたかったんです。
渡辺: 山根さんの料理に対する私の印象としては、「ポンテベッキオ」の成功ぶりからか、リストランテというイメージが強かったんですけど、いつ頃からピッツェリアをやろうと思いはじめたんですか?
山根: 前菜風に小さなピッツァやカルツォーネみたいに包んで焼いた料理は以前からつくっていたんですが、本気でやろうと考えのはわりと最近です。やるならそれなりの覚悟をもって、窯を入れて本格的にやりたかったので今まであえて封印していたんですよ。
渡辺: なるほど。ずっと本格的なピッツェリアをやりたいと思っていたところに、なんばパークスへの出店の話がきたということですね?
山根: そうなんです。なんばパークスの話を聞いたときに、これはピッツァしかないと思いました。こんな絶好なロケーションはほかにないですから。
渡辺: 本当にそうですね。
山根: うちのスタッフは当然イタリア料理について広くいろいろなことを学びたいと思っています。その中でピッツァに関してはこれまでなかなか経験させてあげることができなかったので、これは我々スタッフにとってもとても良い機会でした。イタリア料理をやる人で“粉”を使うのが嫌いだという人はいないですから。みんなパスタをつくってみたいし、ピッツァもつくってみたいんですよね。
本音で言うと、まずパスタとかピッツァをちゃんとつくれないとだめだと思うんです。ピッツァでいえばマルゲリータ、パスタでいればポモドーロ的なもので人々の印象に残るぐらい美味しいものがつくれないのに、皆があまり知らないような素材の料理をつくったからといってそれが何なんだろうと思います。
トリフやキャビアを使った料理をやらしたら上手いけど、ポモドーロ(トマト)の料理をやらしたら全然下手というんじゃ嫌ですよね。
イタリア料理というのは、「ごく少量の美味しいもので、たくさんの“粉”を食べましょう!」という料理なのではないかと思います。
渡辺: 何だかんだ言ってもイタリア料理はパスタのウェートが大きいですよね。
日本が「米」の文化であるとしたら、イタリアは「粉」の文化。パンがあり、パスタがあり…やっぱりイタリアには“粉もの”の伝統があります。
山根: そうですね、イタリア料理にとって“粉”というのはとても大事なものだと思います。
渡辺: 料理人は、たとえば肉料理が得意な人や、前菜が得意な人、魚料理が得意な人といろいろですが、私は昔から自分は“粉もの”の料理人だと思っていました。確かに肉料理も魚料理も好きなんですけどね、やっぱり専門は“粉もの”。ピッツァであり、パスタであり、ドルチェなんです。
山根:
たとえばリンゴを使ってドルチェをつくる場合、煮込んだり焼いたりして餡(あん)状のものをつくるとするじゃないですか。そのとき生地とのバランスが悪いと、あんこだけの饅頭を食べるようなものであまり美味しくないですよね。
そう考えると“粉”の重要性がわかると思うんです。
要するに、ソースでも何でもいいんですが、美味しい「餡(あん)」に相当するものができたら、それとバランスを取るための良い生地もの=粉ものが必要なんです。それで量的なバランスが取れて、食感のバランスも取れて、はじめて美味しくなるんですね。
リンゴを煮込んだり焼いたりしたものだけを食べてもそれほど美味しくない。だけど、パイでもなんでもいいんですが、うまく焼けている生地とちょうど良いバランスで合わせてあげるととても美味しくなるということですね。
イタリア料理って、基本的に「ごく少量の美味しいもので、たくさんの“粉”を食べましょう!」という料理なのではないかと思います。
  (対談は後編へ続きます。)
対談の後編はこちら
山根大助
リストランテ「ポンテベッキオ」オーナーシェフ
日本を代表するイタリア料理界の巨匠。イタリア本国での修業を経て、1986年、大阪本町に「リストランテ ポンテベッキオ」をオープン。その後、次々とコンセプトの違う店舗をオープンし、今や国内におけるイタリアンレストランの代表格と評される。本場イタリアでの評価も高く、2002年、イタリアのベネト州で開かれたイタリア最大のワインイベントの正式晩餐会において、イタリア国外のイタリアンレストランBEST5に選出されたほか、イタリアの権威あるレストランガイドブック『ガンベロロッソ』誌において2回連続で日本のイタリアンレストランの1位に輝いた実績を持つ。


渡辺陽一
レストラン「パルテノペ」総料理長
昭和59年に渡伊し、在ローマバチカン日本大使館・大使付料理長に就任。その後10年間に渡る修業を重ねイタリア国内のリストランテの料理長をも経験。帰国後も第一線のイタリアンシェフとして活躍中。得意とするのは南イタリアの伝統的な地方料理、特に6年間滞在経験のあるナポリの郷土料理。
この対談は、イタリア料理レストラン「スッド ポンテベッキオ」で行われました。
リストランテ スッド ポンテベッキオ
大阪市浪速区難波中2-10-70 なんばパークス8F
TEL:06-6646-4000
営業時間:ランチ 11:30〜14:00(L.O.)・15:00(close)/ディナー 18:00〜21:30(L.O.)/ピッツェリア 11:30〜16:00(L.O.) 18:00〜22:00(L.O.)/バー 18:00〜24:00(L.O.)
定休日:第2・第4月曜日
「ポンテベッキオ」
ホームページはこちら
http://www.ponte-vecchio.co.jp/
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