シリーズ・イタリアンの巨匠
第12回「ポンテベッキオ」オーナーシェフ 山根大助
山根流イタリアンとは?〈後編〉
イタリア料理の本質に迫るためにはイタリア人を知ることがとても大切。イタリア人でないとわからないことを、これからももっともっと知りたいですね。
渡辺: ずばり、山根さんのイタリア料理というのはどんな料理でしょうか?
山根: そうですね、まず最近はあまり重たい料理はつくれなくなりました。
しっかりとした料理でも、食べ終わってお腹がしんどくならないような料理を目指しています。
渡辺: いろいろとご経験される中で見えてきたことがあるんでしょうね。
山根さんご自身の年齢というのもあるんでしょうか?
山根: そうですね。年齢的なものも確かにあると思います。
とにかく私は、ピュアな味、混じっていない味が好きなんです。もちろん複数の食材を一緒には使わないという意味ではありません。たとえば、赤と青を混ぜたら紫になるわけですが、紫の料理は嫌なんです。青と赤がそれぞれあって、ちょっとだけ紫に変わっている部分もあるね、というような料理をやりたんですよ(笑)。
それと、前回の対談でも話しましたが、イタリア料理の本質に迫るためにはイタリア人を知ることがとても大切だと思っています。
たとえば、うなぎ丼が出てくると日本人は“山椒(さんしょう)”が欲しくなりますよね。あるいは、かけそばやうどんが出てくると“七味”が欲しくなる。これなんですよ。
“うなぎと山椒”という組み合わせは理屈じゃないから、とくに理由はないですよね。もしイタリア人にうなぎ丼を出しても山椒を欲しがったりはしないし、「なんで山椒なの?」と聞かれても答えようがない。
イタリア料理でも、地方性であったり、個性だったりというのは、大抵そういう説明不可能な習慣的なことなんです。
渡辺: それが文化なんでしょうね。
山根: そうなんです、私もそう思います。文化なんですよ。
だから、現地で学ばなければならなかったりするわけです。
渡辺さんは奥さんがイタリア人でいらっしゃるから、そういう点でとてもうらやましいです。
渡辺: はい。私もその点はイタリア料理の料理人としては大きなメリットだと思っています。
山根: われわれ日本人にとっての“うなぎと山椒”や“かけそばと七味”と同じように、「なんで?」と聞いてみても「イタリア人だからねぇ」としか答えようのないことっていっぱいあると思うんです。そういうイタリアン人でないとわからないことを、これからももっともっと知りたいと思いますね。
たとえば生ハムをせん切りにして、ほうれん草のおひたしの上にかつお節の代わりにかける。それにオリーブオイルをかけて食べたら、もう立派なイタリア料理です。
渡辺: 最後にこの対談ページを読んでいる方々に向けて、家庭でイタリア料理を作るときのアドバイスなどありますでしょうか。
山根: そうですね、まず調味料としてイタリアの美味しさを表現できる素材というのがあります。
代表的には「グレモラータ」と呼ばれるイタリアの調味料に入っているような素材ですね。たとえば、ケッパー、アンチョビ、にんにく、パセリ、レモンやオレンジなど柑橘類の皮、そしてオリーブオイル。ほかに付け加えるなら、オリーブや乾燥トマトでしょうか。
そして、イタリア料理における旨味調味料は何かと考えると、私はパルミジャーノチーズと生ハムだと思っています。
だから、たとえば生ハムをせん切りにして、ほうれん草のおひたしの上にかつお節の代わりにかけて、さらにオリーブオイルをかけて食べたら、もう立派なイタリア料理です。
渡辺: なるほど。確かにそうですね。
山根:
パルミジャーノチーズもそうですが、イタリア料理ではそういう旨味の使い方をするんですよね。
ご家庭でも今挙げたようなものを、すべてじゃなくてよいので少し揃えておくとよいでしょう。必要に応じて刻んで混ぜたりすることで、普通の味が簡単にイタリア料理の味になります。
あとは、何より美味しく調理してください、ということですね。
ゆでるなら美味しくゆでる、炒めるなら美味しく炒める。別に電子レンジでチンでもいいんです。そうやってつくった料理に今お話したような素材で味つけすれば、ご家庭でも十分イタリアらしい味に仕上がるはずです。
山根大助
リストランテ「ポンテベッキオ」オーナーシェフ
日本を代表するイタリア料理界の巨匠。イタリア本国での修業を経て、1986年、大阪本町に「リストランテ ポンテベッキオ」をオープン。その後、次々とコンセプトの違う店舗をオープンし、今や国内におけるイタリアンレストランの代表格と評される。本場イタリアでの評価も高く、2002年、イタリアのベネト州で開かれたイタリア最大のワインイベントの正式晩餐会において、イタリア国外のイタリアンレストランBEST5に選出されたほか、イタリアの権威あるレストランガイドブック『ガンベロロッソ』誌において2回連続で日本のイタリアンレストランの1位に輝いた実績を持つ。


渡辺陽一
レストラン「パルテノペ」総料理長
昭和59年に渡伊し、在ローマバチカン日本大使館・大使付料理長に就任。その後10年間に渡る修業を重ねイタリア国内のリストランテの料理長をも経験。帰国後も第一線のイタリアンシェフとして活躍中。得意とするのは南イタリアの伝統的な地方料理、特に6年間滞在経験のあるナポリの郷土料理。
この対談は、イタリア料理レストラン「スッド ポンテベッキオ」で行われました。
リストランテ スッド ポンテベッキオ
大阪市浪速区難波中2-10-70 なんばパークス8F
TEL:06-6646-4000
営業時間:ランチ 11:30〜14:00(L.O.)・15:00(close)/ディナー 18:00〜21:30(L.O.)/ピッツェリア 11:30〜16:00(L.O.) 18:00〜22:00(L.O.)/バー 18:00〜24:00(L.O.)
定休日:第2・第4月曜日
「ポンテベッキオ」
ホームページはこちら
http://www.ponte-vecchio.co.jp/
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