こむぎ粉くらぶ All About Flours And Flour Cooking
粉料理名鑑 粉料理名鑑レシピ 全国粉料理探訪 こなコラム クイズ粉料理百科 全国粉料理MAP
日清製粉グループ本社レシピと食の生活情報こむぎ粉くらぶ全国粉料理探訪>002京都 京生麩
全国粉料理探訪
002京都|京生麩 さまざまな顔をもつ、京の雅
INDEX
PART1 京都らしさ、伝統の美意識は食にも生き続ける
PART2 精進料理から今へ、千変万化した京の生麩
PART3 新しさとまみえ始めた、ほんまもんの京の味
PART4 今日も湯気立つ工房で、京の生麩はつくられる
PART1|京都らしさ、伝統の美意識は食にも生き続ける
京都を訪れると、平安の都から連綿と続く伝統に裏打ちされた美意識が、いまだ息吹いているのが感じられる。例えば、色。京都には伝統色というべきものがある。茶屋で味わうお抹茶の深い緑、錦市場で出会う京野菜の渋い色合い、日暮れた街に灯る提灯の淡い色味、織物は色と色を競い合い、いかにも京都らしい調和をなしている。世界のデザイナーが京都に目を向け、その美意識をこぞってデザインに取り入れようとしているそうだが、そんな話も大いに頷けるものだ。
錦市場はじめ、京都を歩くのは気分がいい
錦市場はじめ、京都を歩くのは気分がいい
口に入れるのが惜しい、手鞠麩の美しさ
口に入れるのが惜しい、手鞠麩の美しさ
食についてもまたしかり。京の雅が織りなす美しい日本料理は“見せる”料理として発展した側面が強い。京生麩は、そんな京料理に欠かすことのできない素材なのである。写真の手鞠麩(てまりふ)を見てください。伝統的な手作業にしかなしえない、この美しさ、かわいらしさ。食べるのがもったいないというのはおざなりな表現だが、いざ口に入れれば、あの食感。微妙な味わい。生麩は、京都の奥深さと重ね合わせたくなるような“食す優美”とも言うべき素材なのである。
▲ページのTOPへ
PART2|精進料理から今へ、千変万化した京の生麩
麩は、唐代の中国で生まれ、室町時代の日本に伝えられたと言われる。鎌倉期以降、精進料理の中で発達したのは、肉や魚介を用いないのだから、その高タンパク質によるところが大きいだろう。その後に生まれた懐石料理でも、生麩は欠かすことのできない素材として、今に生きていることはご承知の通りだ。
もっとも、そうは言っても、生麩というものを召し上がったことがある方はそれほど多くないかもしれない。お吸い物によく浮かんでいる、ふにゃふにゃしたのは保存がきく焼き麩であることが多い。生麩は保存があまりきかず、出荷量も焼き麩に比べてはるかに少ないから、なかなか口に入りにくい。
しかし、あの食感。わさび醤油でお刺身風にいただく生麩の、もちっとした噛み心地、舌で転がすとすうっと溶けてなくなるような、あの感じ。油で揚げた生麩に田楽味噌をぬっていただけば、さっくりとした歯触り、その後にふかふか、もちもちしたなかで混じり合っていく微妙な味わい。そして、麩まんじゅう。生麩の内部にこしあんを仕込み、茹であげた麩まんじゅうのつるるんとした歯触り、すべらかなのどごし。今まであまり知らなかった食感の、この和スイーツをテレビや雑誌が紹介し、じわじわ話題を呼んでいるというのももっともな話だ。
上)胡麻麩、よもぎ麩、松前麩(昆布)の刺身|下左)赤みそとゆずみそでいただく生麩の田楽|下右)こしあんをくるんだ、つややかな麩まんじゅう
上)胡麻麩、よもぎ麩、松前麩(昆布)の刺身
下左)赤みそとゆずみそでいただく生麩の田楽
下右)こしあんをくるんだ、つややかな麩まんじゅう
上)雅六の生麩コース「六華」(3,500円)|下)野菜の炊き合わせに紅葉麩が彩りをそえる
上)雅六の生麩コース「六華」(3,500円)
下)野菜の炊き合わせに紅葉麩が彩りをそえる
「お麩の魅力を一口に言えば、何にでも変化するということかもしれません」そうおっしゃるのは、京都で150年余り生麩をつくり続ける老舗「麩藤(ふうとう)」の代表取締役、中川邦広さん。小麦粉を水にさらしてもんでいくとでんぷんが流され、グルテンと呼ばれるタンパク質が残る。パンを焼いたとき骨組みとなり、麺にコシを与えることで知られる、グルテンが麩の主原料である。大量の小麦粉からわずかしか取れないだけに、グルテンが主原料となる食材というのはめずらしい。
そのグルテンが、さまざまな変化を遂げるのが生麩の魅力と言う。
「グルテンは非常に力(りき)のある食材です。これに餅粉を加えたり、蒸したり茹でたりするなかで水分を封じ込めることにより、さまざまな食感を与えていきます。刺身や田楽にする棒状の相良麩(さがらふ)、紅葉やいちょうなどをかたどった花麩、それから麩まんじゅう、どれも違った配分と製法ですから、当然、食感も異なってきます」
相良麩であれば、定番の粟(あわ)、よもぎ、胡麻などのほか、依頼に応じて、唐辛子や栗などさまざまな食材を練り込む。グルテン自体は無味に近いものだから、こうした味付けの妙がそれぞれに異なる深い味わいをかもしだす。さらに、料理の五法、すなわち、生、煮る、揚げる、焼く、蒸す、のいずれにもしっくりと調和し、それでいて、まるでちがった表情をつむぎだす千変万化は、麩藤が経営する「麩坊 雅六(がろく)」の生麩料理の凝りようにもしっかりとうかがえた。
▲ページのTOPへ
PART3|新しさとまみえ始めた、ほんまもんの京の味
良彌で人気の、生麩が入るぜんざい(630円)
良彌・奥の庭で人気の、生麩が入るぜんざい(630円)
多くの観光客が訪れる嵐山の料理店「良彌(よしや)・奥の庭」では、コース料理に入る生麩田楽のほか、生麩が入るぜんざいの人気が高いと言う。麩藤に特別に注文してつくってもらった栗麩と紅葉麩が入る。良彌を運営する中央観光(株)の広報、谷和子さんは、生麩ぜんざいの人気について、こう分析する。
「ここは観光地ですし、生麩にしても、湯葉にしても、お豆腐にしても、京都らしい食材というのがまずあって、それで生麩のお料理をご注文いただいたら、この食感。ひと味違うというところにご満足いただいているんだと思います。それと、生麩はお餅に比べてカロリーが約半分なんです。そのへんは特に若い女性のお客様を中心に受けているところですね」
同社グループの東京ショップでも、京生麩をあしらったソフトクリームなどをいただくことができる。
「枝豆の季節には、枝豆のソフトに合わせて、枝豆を練り込んだ、ずんだ麩を合わせます。生麩は白玉のように、冷たくしても固くなりません。もっちりしていながらやわらかなままですから、ソフトクリームとの相性はとてもよくて、これまでになかった新しい組み合わせだと思います」(谷さん)
なにも敷居の高い料亭でなくたって、生麩の食感を楽しめる機会は増えつつあるようだ。麩藤さんでも、永きにわたってグルテンを扱ってきたノウハウを活かし、グルテンを使用したそばやパスタをつくり始めたところだと言う。
「『新しいもん、できひんか』と言われたら、それは興味ありますよ」(中川さん)
伝統食、京生麩を「現代の食」として味わってもらおうという意欲は大きい。ただし、老舗のこだわりは、それにもまして大きい。
「うちは小麦粉から精製した生のグルテンを使っているので、そうしたものでつくった生麩は、麩まんじゅうにしても、力(りき)がちがいます。やっぱり、ほんまの京の味、ほんまの京生麩を食べてもらいたいとは思いますね」
上)東京・汐留の「お豆腐茶房 京きさんじや」でテイクアウトできる「生ゆば甘味ソフト」(525円)|下)良彌秋限定の「松花堂」(3,150円)には、生麩田楽が入る、
上)東京・汐留の「お豆腐茶房 京きさんじや」で
テイクアウトできる「特製あんみつ」(788円)
下)良彌秋限定の「松花堂」(3,150円)は、生麩田楽が入る
▲ページのTOPへ
PART4|今日も湯気立つ工房で、京の生麩はつくられる
上)花麩は色の異なる生地を重ね合わせてつくる|中左)木型におさめて茹でると、きれいな紅葉に|中右)強烈な力(りき)をもつグルテン|下)手鞠麩づくりには職人の技が特に要求される
上)花麩は色の異なる生地を重ね合わせてつくる
中左)六条麩はグルテンのみでつくられる
中右)強烈な力(りき)をもつグルテン
下)手鞠麩づくりには職人の技が特に要求される
麩藤さんにお願いし、生麩をつくっている現場をおじゃました。大釜が湯気を立てている工場では、二十数名の職人が肩を触れ合わせるようにしながら、それぞれの作業にあたっている。
まずグルテンと餅粉を合わせて、切り込む(混ぜる)作業から始まる。それぞれの正確な分量が食感を左右するのは言うまでもないが、小麦グルテンは気温に敏感なため、季節によって職人の勘が物を言うところでもある。そして、練る。花麩の場合であれば、何色もの生地を別々に練り、それらを重ねて、手で押して延ばしていくのである。この層が多ければ多いほど、グラデーションは美しくなる。紅葉麩はなんと、12層にも重ねられていた。今度はこれを別の職人が引っ張って延ばす。リズミカルな動きで、太かった生地はみるみる細く延ばされていき、切り分けたら大釜でゆでる。また別の職人が丁寧に木型におさめ、再び茹でる。型から取り出した生麩の断面は、実に愛らしい、紅葉の様相であった。
もちろん、相良麩も、麩まんじゅうも、六条麩(グルテンのみを使用し、醤油やみりんで味付けしたもの)も、すべて職人による手づくりだ。特に麩まんじゅうや、先の手鞠麩などの細工麩は、相当の熟練を要すると言う。
手間を惜しまず、暇を惜しまず、職人の手によってつくられる生麩は、しかし、数日しか保たない運命なのだ。
お土産に、大切に持ち帰った粟麩を家でさっそく、煮たり、揚げたりして賞味した。少しだけ残ったのを、網の上でこんがり、焦げるくらいに焼いてみた。ぷくっと膨らんだ肌にさっと塩をふりかけてほおばると、じんわりと幸せの味。決して劇的な味じゃないけれど、このなめらかな舌触りと、鼻の奥にただよう小麦粉のかすかな香り。中川さんが「はんなり」と表現していたのは、この味のことだったかと確信した。
できたての麩まんじゅうを手に、麩藤の中川さん
できたての麩まんじゅうを手に、麩藤の中川さん
▲ページのTOPへ
SHOP DATA
麩藤(ふうとう)
京都市下京区六条通若宮東入
TEL:075-351-1180
http://www.kyo-namafu.co.jp/
日曜日定休(水曜日不定休)
麩藤(ふうとう)
SHOP DATA
麩坊 雅六(がろく)
京都市下京区東洞院通上数珠屋町上ル富田町384
TEL:075-344-0412
http://www.kyo-namafu.co.jp/
不定休
麩房 雅六(がろく)
     
SHOP DATA
京都嵯峨料理 良彌(よしや)「奥の庭」
京都市右京区嵐山渡月橋北詰東
TEL:075-871-0456
http://www.yosiya.jp/
京都嵯峨料理 良彌(よしや)
 
SHOP DATA
お豆腐茶房 京きさんじや
東京都港区新橋1-5-2 汐留シティセンター
TEL:03-3574-0328
http://www.donsarya.co.jp/
お豆腐茶房 京きさんじや