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全国粉料理探訪
001東京・月島|もんじゃ焼き 下町の風情が生んだ粉文化
INDEX
PART1 70軒以上がしのぎを削る、そのルーツは駄菓子
PART2 もんじゃの味わいにも似た東京下町のたたずまい
PART3 明太子もちチーズもんじゃ、このボリュームを見よ
PART4 コミュニケーション手段にもなった下町の粉文化
PART1|70軒以上がしのぎを削る、そのルーツは駄菓子
東京メトロ(地下鉄)で有楽町駅からわずかに5分。銀座や築地からは徒歩で訪れる人も多い。月島はこうした好立地にありながら、しかし、そこかしこに下町風情を残す、初めてなのに懐かしいような街だった。
駅を出るとまっすぐに伸びているのが、西仲通り商店街。「もんじゃストリート」とも呼ばれる、500メートルほどのこの通りを中心に、月島のもんじゃ焼き屋は、なんと70軒以上にものぼる。商店街の入り口に構える「月島もんじゃ振興会協同組合」で理事長を務める村田耕作さんは、昭和29年、この界隈でもっとも早くに開業したもんじゃの店「好美家(よしみや)」の2代目でもある。
好美家のご主人、村田さん
月島「もんじゃストリート」ともんじゃ焼き 「もんじゃってのはね、むかしは駄菓子屋の店内で子どもに焼いて食べさせたもんだったんですよ。『文字焼き』って言ってね、鉄板に水で薄く溶いた小麦粉をたらして、いろはにほへとの文字を書いて、子どもたちに字を教えてあげた。これがはじまりで、時代の変化とともに大人の食べ物に変わっていったんです」
昭和30年代は、好美家を含めて4軒しかなかった。それが急激に増えたのは平成になってから。NHKのドラマ『ひらり』にもんじゃ屋さんが登場したのが契機だったと言う。それから土地の人たちがもんじゃ屋に商売替えするケースが増えてきた。今でももんじゃ屋のほとんどは月島の人が営んでいて、結束は強い。平成9年、振興会を立ち上げ、PRやイベントにも力を入れてきた甲斐あって、“月島のもんじゃ”は東京名物としての地位を確立するに至るのである。
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PART2|もんじゃの味わいにも似た東京下町のたたずまい
日本各地からはもちろん、海外からも多くの人が訪れるようになった月島は、もんじゃ焼きだけでなく、街のたたずまいからして人をじゅうぶんに惹きつけるものがあるだろう。西仲通りは清潔に整備された商店街だが、目を引くのはその通りから脇にそれる細い路地。ぜんぶでいくつあるか。かつての長屋を思わせる古い家屋と、思い思いに植えられた木々の緑、今日もひなたぼっこの猫、ソースのにおい。こんな下町の情景を、戦禍を受けなかった月島では今もかいまみることができる。
昔ながらの細い路地
古くて新しい佃界隈の街並み すぐ近い佃島も、散策するにはもってこいの地域だ。佃島は江戸時代、徳川家康の命により埋め立てられた島で、摂津国佃村(大阪)から呼び寄せられた漁師たちが始めたという佃煮で有名。由緒ある佃煮屋が今も数軒健在で、通り過ぎようとすると甘辛い香りが鼻の奥をくすぐり、中をのぞき込んでみたくなる。
隅田川には勝鬨(かちどき)橋、佃大橋がかかり、月島や佃と銀座方面とを結んでいる。前者のライトアップは非常に美しいが、入り江にひっそりかかる朱塗りの佃小橋の風情も見逃せない。現在は都市開発が進み、背後には超高層ビルが建ち並ぶ。その独特なコントラストはなかなか名状しがたいものだ。
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PART3|明太子もちチーズもんじゃ、このボリュームを見よ
明太子もちチーズもんじゃ 隅田川沿いをむやみに歩いていたら日暮れてきた。お腹の加減もそろそろという感じで、いよいよ「好美家」をおじゃますることにした。すでに先客があり、香ばしいにおいがそれほど広くない店内に充満している。ここのお店は常連さんが多いそうで、鉄板にむかうお客さんの手付きもなれたものだ。
ところがこちらはそうもいかない。いまだ正しいもんじゃの焼き方というのを実践したことがないのだから、これを機会に村田さんの手をわずらわせることにした。注文したのはとりあえず、好美家さんの一番人気「明太子もちチーズもんじゃ」、それと「特製塩ダレもんじゃ」。いずれも1,200円也。運ばれてきたもののボリュームをみると、この値段も大いに頷けるものだ。
「もんじゃの具の基本は、小麦粉、キャベツ、キリイカ、桜エビ、揚げ玉、これが入らないともんじゃとは言わない。あとはだし汁だけど、これは店によって使ったり使わなかったり。明太子もちチーズはお客さんが発案したんですよ。これとこれ組み合わせたらおいしいんじゃない?って感じでね」
駄菓子が発展しただけあって、もんじゃ焼きの魅力のひとつは自由な発想にあるとみた。納豆、カレー、スナック菓子、フルーツ…何が入ってもおいしいし、何よりも楽しい。テーブルを囲んで、ハガシ(へら)を片手にわいわいやるのが楽しいではないか。すると「それもあるけどね」と、村田さん。「私は、もんじゃ焼きにはいくつかのポイントがあると考えているんですよ。たとえば小麦粉の質、具の質、なかでもキャベツ。切り方や、切るタイミングも味を左右するんですよ」
なかなか奥が深いのである。
特製塩ダレもんじゃ
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PART4|コミュニケーション手段になった下町の粉文化
「土手」に汁を流し入れる それでは、正調・月島もんじゃのつくり方。まずは鉄板にキャベツなどの具だけを出して、手早く、あの有名な“土手”をつくり、土手の中央にかき混ぜながら汁を流し入れる。見事な手さばきに感心するも、疑問が浮かんだ。なぜ土手をつくるんだろう? それは、かつて七輪やコンロなどに鉄板をのっけてつくった、なごりなんだそうだ。土手をつくらないと汁が鉄板からこぼれ落ちてしまうわけだ。なるほど。
好美家さんの場合はここで味を足す。ソースを2まわし半、それと胡椒を少々。もちろん、このあたりはお好みでかまわない。明太子はこのタイミングで加える。水分を含ませながら丁寧に、かつ迅速にほぐしてやる。
「ダマになったら、俺のとこ明太子が入ってないよ、なんてケンカになっちゃうからね」
全体をだ円形に平らかにして、チーズをかける。チーズがとろけてきたらもう頃合い。ハガシを使って、生地を押さえつけ、軽く焦げつかせるのがポイント。あとはそのまま口にもっていき、はぐはぐと頬張るのみ。みんなで競って取り合おう。ソースの酸味がきいていて、おのずとビールが進むだろう。
「もんじゃってのはね、思うに下町の食文化ですよ。粉の文化とも言っていい。コミュニケーションの手段でもあるでしょう」
がらっと扉が開いた。また常連さんがやって来たようだ。
ハガシを使ってみんなで食べよう
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SHOP DATA
好美家(よしみや)
東京都中央区月島3-15-10
TEL: 03-3531-7061
火曜日定休
好美家
取材協力:月島もんじゃ振興会協同組合
http://www.monja.gr.jp/