郷に入っては郷に従う、チェコに行ってはクネドリーキを食べる。
たとえばレストランでグラーシュといってさまざまな香料入りの牛の煮込み料理を頼む、それとも鶏のクリーム煮かパプリカソース煮を頼む。黙っていても、多分出された皿の片側には、薄く色のついた小麦粉のゆでだんごを厚さ1センチぐらいに輪切りにしたのが3〜4枚並んでいるはずだ。これがチェコ人の食卓になくてはならないクネドリーキ。たいていの家では手軽に自家製のこのだんごをこねてゆでてつくる。
みそ汁のつくり方に小川さんと山田さんの家でそれぞれの流儀があるように、クネドリーキにもクノップさんとクビチェクさんの家では製法がやや異なる。
ここでは最大公約数的レシピを紹介すると、まず材料、粗びき小麦粉500グラム、ミルク半リットル、丸パン4〜5個、卵の黄身2個分、塩少々。
| 1: |
ボウルに入れた粉に少し温めたミルクと塩と卵黄を加え、さらにサイの目に刻んだパンを混ぜる。 |
| 2: |
泡が出るまでこねる。 |
| 3: |
粉をまぶした板の上で2の生地を直径5〜7センチのロール状に整える。この分量で3〜4本できるはず。 |
| 4: |
大なべにたっぷりの湯をわかし、静かに約30分ゆでる。 |
| 5: |
取り出して輪切りにし湯気を逃がしてから、肉汁をかけて供する。 |
|
この材料にバターを加えなければという人もいるだろうし、うちではベーキングパウダーを入れますよという声も出るかもしれないが、そのあたりはお好みで。
さて「肉汁をかけて」といま書いたが、クネドリーキのべんりさは、肉料理などのソースや汁をこれで吸い取って、きれいに平らげることができることだ。玄米パンよりもう少し腰がしっかりした感じのこのだんごに、肉汁がしみこむような、しみこまずにまとわりつくような、たいへん微妙な適合状態で口に入ってくる点がなかなかよろしい。昔々、といってもつい17世紀ころまでヨーロッパではスプーン、フォークの類は一般化しておらず、手づかみ、口飲みが普通だった。16世紀末にフランスのモンテーニュがイタリアでスプーンを出されたが、使わずに手づかみで食べ、そのつどナプキンで手をふいていたという証言がある。英語ではだからスープを「飲む」といわずに「食べる」と表現するのだが…それはともかく、なるほどクネドリーキのようにべんりなものがあれば、スープもソースもわけなく食べられる。
|
|