昭和59年8月、日本で開かれた国際植生学会の大会にやってきたギリシャ・テッサロニキ大学のラブレンティアーデス教授は、湘南、東海、北陸、近畿、東北と各地ごとに様相の異なる日本の海岸を見て回るのに余念がなかった。
古くから人が海岸地帯に住みつき、耕作と採草を重ね、宅地と工業用地化してきたギリシャの海岸。そこに重なる観光公害。踏み荒され、草1本生えない砂丘と丘陵地。地中海沿岸の乾燥地では観光客のタバコの火が思わぬ大火を呼び、森林を焼くことも多い、という。海岸植生をどうやって生き返らせるか。
「いきなり木を植えるのではなく、長い根を発達させる野生の麦類を使って、まず砂の移動を止めることを、いま考えている」
と教授は記者団に語った。
海岸に麦を?実はそれに向いた野生の麦類があるのだ。エゾムギ属の一種で、長い地下茎を地中にはわせ、海岸に群生する。丈が2メートルにも達するので、防風の役割も果たす。
この麦の親類、日本でもハマニンニク、テンキグサなどという名前で知られている。秋田、山形など日本海沿岸の砂地で、それと気をつけばよく見かけるはず、とは専門家の話。北海道の原生花園にもあるそうだ。 |
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