あのアダムとイブの話のせいか、リンゴを使った菓子というと、なんとなく罪深い(?)話がつきものだ。
タルトレット・ド・ポム・ニノンのリンゴのタルトレットというのがあって、これはアンズの角切りの上にカスタードクリームをたっぷりかけて、その上にリンゴのシロップ煮をのせて、生クリームをリンゴの穴に絞り込み、カシスのソースを添えるという、まあ濃厚なタルトなのだが、この菓子に名を留めるニノン・ド・ランクロという女性がまたまた濃艶(のうえん)なご婦人で、17世紀のフランス宮廷に浮き名を流しつづけ、パリ・マレー区ツールネル街の彼女のサロンに集まるあまたの男を手玉にとった。修道院入りしてからさえ、若い僧を誘ってさんざんじらしたあげく、ある夜こういったというからおそろしい。
「さあ、あなた、ずいぶん待ったでしょ。きのうがやっとお誕生日だったのよ。わたくしね、80歳の記録がつくりたかったの」
海を渡ってイングランド北部、ヨークシャーではアップルパイにウェンズリデールの白チーズを添える。かすかな酸味が甘いリンゴに合うからという。この地では「チーズを添えないアップルパイは抱擁のないキスのようなもの」だそうだ。 |
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