47都道府県のコナモン
東京の麺類といえば、「蕎麦」と答える人が多いでしょう。
でも実は、ご当地うどんも健在なんです。
埼玉に隣接するトトロの森1号地、狭山湖の南エリアに広がる多摩地域北部は、稲作より小麦作がさかんで、各家庭で手打ちされたうどんは「かてうどん」と呼ばれました。麺には野菜が添えられ、アツアツの肉汁につけていただきます。醤油ベースの肉汁がからんだ麺の絶妙な食感、もう止まりません!
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- 東京のご当地名物うどん
- 東京に名物うどんがあるのをご存知ですが?実は江戸時代から、うどんが欠かせなかったエリアがあるんです。それは、東京都武蔵村山市。村山の「かてうどん」は冠婚葬祭のしめの料理として、日常的に食されていました。2006年に「村山うどんの会」が設立され、うどんを扱うお店が増加。休日には、うどんファンが行列を作るようになりました。
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- 手打ち、手切りの醍醐味
- 地元では「玉売り」と呼ばれる、販売だけの製麺所から、食堂も備えるうどん店となった「村山満月うどん」におじゃましました。まず塩水でこね、ねかせた地粉を少しずつのばしていき、何度も麺棒にまきつけてさらに薄くしていきます。なめらかな風合いの布地のような生地を、包丁で均等に手切りし、最後に端の不定形な生地を食べやすい大きさに切って、生麺が完成。「ミミ」と呼ばれるこの端の部分こそ、手打ち、手切りの証です。
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- 看板メニュー「肉汁つけうどん」
- 「村山かてうどん」に共通するメニューが「肉汁うどん」。豚バラが入ったつけ汁は、かつお節などの節類と昆布、煮干しでとっただしに、醤油ベースのかえしを合わせたアツアツです。麺に添えられる彩りのよい野菜「かて」をつまみながら、つけ汁がからむしっかりした麺をかみしめ、豚の旨みを味わい・・・、その繰り返しが止まりません。
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- 村山のゆでまんじゅう
- 地元の食堂にも肉汁うどんはありますが、寒くなってくるとおだしたっぷりのかけうどん「肉うどん」も好評です。他にも人気なのが、うどんの生地で小豆あんを包んだ「ゆでまんじゅう」。小麦粉のもっちりとした食感が自然な甘みの小豆と相性がよく、かなりのボリュームでもぺろりといただけるおいしさです。
東京のご当地名物うどん
東京の名物うどんは?と聞かれても、よほどの麺通でなければ答えられないかもしれません。
でも江戸時代から、暮らしのなかにうどんが欠かせなかったエリアがあるんです。
それは、東京都武蔵村山市。
2006年に「村山うどんの会」が設立され、専門店をはじめうどんを扱うお店が増加。休日には東京ご当地うどんのおいしさに、うどんファンが行列を作るようになりました。
昭和45年に武蔵村山市となった村山郷から埼玉県の秩父一帯は、雨量や土地の適性として稲作より小麦粉栽培がさかんでした。
村山の「かてうどん」は天保6(1835)年ごろから、中藤村、三ツ木村、横田村、岸村など武蔵村山周辺で食べられていたといいます。
冠婚葬祭のしめの料理として、うどんは定番となり「うどんが打てなければ嫁にいけない」と言われるほど、うどん打ちが日常的に行われていたうどんの村だったのです。
案内してくださった「村山うどんの会」の藤本ゆみ子さんに、村山かてうどんの特徴を教えていただきました。
まず麺は、国産小麦を使用。茶色がかった太めのうどんです。
つけ汁は、かつお節などの節類と昆布、煮干しでとっただしに、醤油ベースのかえしを合わせた温かいつけ汁。
麺には必ず「かて」と呼ばれる野菜がつきます。地元で栽培された小松菜や野菜の天ぷらなど、お店ごとに個性が光ります。
昔はつけ汁に入るのは薬味ぐらいでしたが、戦後はつけ汁に豚バラを入れるようになり、「肉汁うどん」が村山かてうどんの看板商品となっていきました。
手打ち、手切りの醍醐味


家ごとに手作りされていた村山かてうどんが、時代の流れとともに製麺所で作られるようになり、その後食堂を備えたうどん店が登場するのは2000年代初頭から。
製麺所からのちにうどん店となった「村山満月うどん」におじゃましました。
1986年から比留間みつさんが手打ち麺を販売していましたが、2003年に食堂をはじめ、いまでは息子夫妻の良幸さん、麻里さんが受け継いでいます。
塩水でこねて、ねかせた地粉を少しずつのばしていきます。
少しずつ薄く広がっていく生地を、何度も麺棒にまきつけてさらに薄くしていきます。
均一に切れるように、生地は円形から四角に広がり、直径30㎝くらいの円形が一片70㎝以上の大きな四角形になるまでに約10分。
相当な力とコツが必要です。
なめらかな風合いの布地のような生地は、包丁で3mmくらいの幅で手切りされていきます。
目盛りも何もないのに、手の感覚だけでトントンと麺が出来上がっていく様子に見とれてしまいました。
最後に、端の不定形な生地を食べやすい大きさに切って、生麺が完成。
「ミミ」と呼ばれるこの最後に残る端の部分こそ、手打ち、手切りの証。
10~12分ゆでられた麺は、水でしっかりしめられます。
やや色づいた割り箸より太い豪快な麺、ざるにのって、野菜を添えられて登場します。
看板メニュー「肉汁うどん」
「村山かてうどんMap」に掲載されているお店を6軒ほど回ってみましたが、どこも共通して提供されるのが「肉汁うどん」です。


笑乃讃
住所:東京都武蔵村山市三ツ藤1-86-4
電話番号:042-569-1056
営業時間:昼11:00~15:00(ラストオーダー14:45)
※売り切れ次第終了
定休日:月曜日 ※月曜日が祝日の場合は翌火曜日
肉は豚バラ。
「笑乃讃」の店主は中華の修業をされていたので、チャーシューにしてつかっています。
豚バラが入ったつけ汁は、かつお節などの節類と昆布、煮干しでとっただしに、醤油ベースのかえしを合わせたもので、小さめの丼にはいってアツアツです。
横には水でしめられたゆでたての麺に彩りよく「かて」と呼ばれる野菜が添えられています。
「かて」をつまみながら、醤油、うま味、甘味のバランスのいいつけ汁がからむしっかりした麺をかみしめ、豚を味わい・・・、その繰り返しが止まらなくなります。

村山満月うどん
住所:東京都武蔵村山市三ツ木1-12-10
電話番号:042-560-3559
営業時間:昼11:00~15:00(ラストオーダー14:30)
夜18:00~21:00(ラストオーダー20:30)
※金曜日・土曜日のみ
定休日:月曜日、第2火曜日、年末年始、その他不定休
つけ汁も、胡麻、とろろ芋、カレーなど種類が多く、麺はもちろん、つけ汁、薬味もお店ごとに特徴があるので何軒か食べ歩きたいもの。麺の量も少なめから5玉以上まで選べるので、おなかに合わせられるのが嬉しいです。
祖母の打ち方を母が受け継ぎ、孫へと伝えられた村山かてうどんの製麺技術の伝承は、このエリアが誇る文化として息づいています。

一休
住所:東京都武蔵村山市本町1-48-1
電話番号:042-520-1919
営業時間:水~土11:00~13:30,17:30~23:00
日11:00~14:00,17:30~23:00
定休日:昼・夜とも月曜日、火曜日
村山のゆでまんじゅう

田舎屋
住所:東京都武蔵村山市中藤4-39-5
電話番号:042-564-4428
営業時間:昼11:00~15:00
定休日:水曜日、木曜日
最後におじゃましたのは、田舎屋さん。地元の食堂として愛されるお店です。
肉汁うどんはありますが、寒くなってくるとおだしたっぷりのかけうどんである「肉うどん」も人気。豚の甘みと脂のコクが、地元の醤油味をひきたてます。
こちらでは、うどんの生地で小豆あんを包んだゆでまんじゅうも人気です。小麦粉のもっちり食感が自然な甘みの小豆と相性がよく、かなりのボリュームというのに1個ぺろりといただけました。
奥東京のコナモンエリア、江戸時代から続く郷土料理の代表格として、武蔵村山市の村山かてうどんは、もっと多くの人に知っていただきたい、味わい深いご当地の味覚文化なのでした。



参考文献 村山うどんの会ガイドマップ
文・写真 日本コナモン協会会長 熊谷真菜 ※2019年8月取材