コナモンSCOOP!
仏教の教えがベースの平和な微笑みの国、タイ王国。
ドリアンなどのフルーツや海の幸がふんだんに採れ、近隣国からの影響も受けています。
屋台を中心とした豊かな食文化が魅力のバンコクで、ユニークなコナモンに出会いました。
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- 熱気あふれる市場は屋台王国
- タイには今も、昔ながらの市場が大小たくさん残っています。巨大な市場で迷路のような屋台通りをめぐり、ふしぎなコナモンをどんどん発掘。日本にはない味、色、食感にはまってしまい、食べ歩きが止まりません!
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- やみつきになる、タイの焼きそば「パッタイ」
- お米の国、タイでは米でつくる麺が充実。焼きそばタイプのパッタイは、麺がもちもちで店ごとにタレが異なり、クセになる美味しさです。チャイナタウンからほど近い創業70年以上の老舗では、卵で巻いたパッタイが大人気。
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- たこ焼の新種?発見!
- 30年前にタイを訪れた時は、すでにたこ焼店がモールにありました。今回は、市場で行列店を発見!と思ったら、ちょっと違う?ひっくり返さず、半球だけ焼いたお手軽な「たこ焼風」でした。でも意外といける味と食感に満足。
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- タイでも「蛸半夏生」(たこはんげしょう)
- 夏至から11日目の「半夏生」は日本の雑節の一つ。半夏生に「蛸」をつけた「蛸半夏生」は“蛸を食べて元気に夏を迎える”文化です。1年中夏のようなタイでもタコは人気で、たこ焼はここ30年ほどの間にすっかり定着しました。
熱気あふれる市場は屋台王国

タイには昔ながらの市場がたくさん残っていて、住宅街の市場はこじんまりしていますが、観光名所のような巨大な市場も健在です。
25年前訪ねたときも迷いこんだ覚えがありますが、今回も全体像を把握しきれないまま、新しいコナモンとの出会いを探っていきます。
バンコクの北部にあるチャトゥチャック・ウイークエンド・マーケットはバンコク最大。屋外のフードコートでは、野菜の揚げ春巻きや、麺類、スイーツ、果物まで数えきれないお店が軒を連ねています。
なかでも、パンダンリーフの小麦粉の花形お菓子は、香りもよくもちもちした食感がたまりません。このような星型の鍋は40年前中国で見かけたことがありますが、タイでは珍しいのではないでしょうか。
隣の鉄板は、ココナッツ入りのミニパンケーキが焼かれている人気屋台でした。
米粉を蒸してシート状にしたところに、一口大のピーナッツあんをのせて、くるんだもの。ピーナッツの甘味ととろけるような皮の相性が珍しく、付け合わせのレタスともあうのが不思議です。

最もよくみかける屋台のお菓子は、砂糖がしっかり入った生地を煎餅状に焼いて、鶏卵素麺と同じ要領で作ったフォーイトーンやメレンゲをのせたカノム・ブアン。少し冷めた方が、パリッ、ふわっな食感がはっきりします
カフェでは、トーストにカスタードクリームをたっぷりぬったメニューが定番で、甘さも鮮烈でした。



揚げコナモンもたくさんありました。
芋団子を揚げたマンティップは、ほんのり甘くて、通りがかりについ買ってしまいます。
揚げバナナの専門店も人気ですし、日本でも話題のチーズトーストもあります。虹色は色だけで、味は普通のとろけるチーズ。市場だけでなく、街角の屋台王国でも好奇心エンドレスな食べ歩きになってしまいました。




新しいモールのフードコートは、うどんやラーメン、定食やさんなど日本スタイルのお店も賑わっています。




郊外の麺類専門店では、チェンマイのカオ・ソーイが有名なので出かけました。
カレースープの麺に揚げ麺がトッピングされていて、飽きさせない食感です。
またチャイナタウンの創業100年を超える老舗では、あひるのあえ麺、汁麺、シュウマイは、串にささって出てきました。
ほかの国と同様、華僑の影響は大きいですね。





米粉のカレー麺、カノム・チーンは、たっぷりのにんにく、しょうが、玉ねぎが入っていて、その量を見るだけで美しくなりそうです。
田舎では、家庭でお米を臼でひいて押し出し麺をゆで、麺とソースを天秤棒にのせて、「カノム・チーン、カノム・チーン」と近所に売り歩く、もとは主婦の手作りランチです。
市場では、製麺所の麺が半乾燥の状態で販売され、さっとゆでて使います。タイ料理研究家のお宅で頂いたときに、いんげんももやしも生で薬味につかわれていて初めての体験でした。
やみつきになる、タイの焼きそば「パッタイ」

タイはお米の国だけに米の麺が充実しています。米の麺の焼きそば、パッタイは見つけたら必ず食べるようにしていました。
創業から70年以上、チャイナタウンからほど近いところにあるパッタイの老舗では、オープン前から行列ができ、人気の凄さを目の当たりにしました。
人気商品は、卵まきのパッタイ。
いわゆる店先がキッチンで、最強の火で炒めていくのは圧巻です。
店ごとにタレも変わりますが、ナンプラー、チリソース、砂糖、一味唐辛子、ピーナッツなど旨みの塊を合わせたタレで仕上げているので、麺のもちもち食感と合わさってクセになる美味しさでした。



たこ焼の新種?発見!
たこ焼リサーチのために、初めてタイを訪ねたのは約30年前。
すでにたこ焼を出す店舗がモールのなかにありました。
当時4個250バーツぐらい(日本円で当時500~600円ほど)で高級ジャパニーズおやつとして、タコ、ウインナー、エビ、カニカマという4種がありました。
現在はもっと安くなり、市場のなかでは定番の商品ですが、どこも粉多めの生地なので、何だかもぐもぐ食感です。

そのなかで行列の人気店を発見。
しかもたこ焼の焼き方を手抜きした、半球焼きの店でした。
もともとタイには、カノム・クロックというお菓子があります。
このお菓子を焼く鍋はまさにたこ焼器を円形に大きくしたようなもので、ココナッツミルクで溶いた米粉を流して、ひっくり返さず、焼き上がった2個を合わせて球体にして売っていました。
今回、カノム・クロックの屋台は減っているように感じましたが、ナイトマーケットで有名なラチャダー鉄道市場には、たこ焼店が少なくとも5軒はあり、お好み焼も一緒に売っている店もありました。
そのカノム・クロック用鍋で、半球ずつ焼いているたこ焼風の食べ物が。
名前は「Ta Lay Krok」。


半球に生地を流したら、ネギをちらし、タコ、イカ、エビ、カニカマをのせ、油をかけながら表面を加熱します。
焼き上がると、トレーに生もやしをしいて、そこにチリソースをかけてできあがり。
カニカマの赤がひときわ目立ち、手抜きの割に見た目もおいしそうな、新種が誕生していたのでした。
味も食感も意外といけます。ちょっと卵多めで、固まりやすくしていました。この焼き方がタイで増えていくのか、定点観測をしたいものです。
「半夏生」(はんげしょう)にタコを食べる食文化

今年も日本では6月から7月2日にかけて、令和最初の蛸半夏生キャンペーンを実施しました。
夏至から数えて11日目の「半夏生(はんげしょう)」は日本の雑節の一つ。
半夏生に蛸をつけて、「蛸半夏生(たこはんげしょう)」とし、“蛸を食べて元気に夏を迎える”文化を継承することを目的としています。
この風習は田植えが終わる時期においしくなるタコを食べ、稲の根がタコの足のようにしっかり根付きますように、稲穂が蛸の足の吸盤のように立派に実りますようにという願いを込めたと言われています。
この30年で、タイのたこ焼はすっかり定着し、和食レストランの幕の内弁当などにも2、3個揚げたこ焼が入っているのも新たな発見でした。街角のたこ焼人気を目の当たりにして、蛸半夏生の習慣が、いつかタイでも定着するのかも・・と期待がふくらみます。






最後にタイ料理を教えてくださったワサナ先生と、蛸半夏生ポスターで記念撮影しました。
しばらくご無沙汰していたバンコクですが、日本食のお店も増えていて、これから食文化の融合がどんな形で進んでいくか、目が離せません。
文・熊谷真菜
写真・八木麻奈美、熊谷真菜
※2019年7月取材