九州・沖縄 九州・沖縄

九州・沖縄

とんこつラーメン 九州

とんこつラーメン

白濁したとんこつスープは、昭和22年に売り出された「久留米ラーメン」が最初と言われます。なんでも、手違いでとんこつスープを強火で炊いてしまったのが「とんこつラーメン」の始まりなんだとか。
大きい寸胴鍋に豚の骨を強火で沸騰させ、骨のゼラチンがたっぷり溶け出した白濁スープは、極細のストレート麺との相性が最高です。低加水の細麺は粘り気が少なく、スープにはあまりからみませんが、そこが意外とあっさり食べられてしまう秘密でしょう。
博多のラーメン屋では、注文時に麺の固さを指定するのが普通です。固めの麺が特に好まれ、「ラーメン、カタメン」のようにオーダーしますが、それよりも固い「バリカタ」、さらには「ハリガネ」「粉落とし」(打ち粉を落とした程度の、ほとんど生に近いゆで加減)を注文するツウもいます。細い青ねぎ、チャーシュー、白ごま、きくらげ、生にんにく、紅しょうが、辛子高菜などが具の定番です。

焼きうどん 小倉

焼きうどん

「焼きうどん」の発祥は、実は北九州市の小倉です。終戦直後、小倉の駅にほど近いある飲食店が、焼きそばを作ろうにもそば玉が手に入らなかったため、やむなく干しうどん(乾麺)を代用し、ソースで炒めたのが始まりだそうです。これに目を付けた町おこし団体が、2001年の北九州博覧会をきっかけに、「小倉発祥焼きうどん」のPRを開始。イベントや定義づけなどを行いました。
ちなみにその定義は、「乾麺を使用するべし」「キャベツは若松産であるべし」「豚肉はバラ肉であるべし」「玉葱はその甘味を引き出すべし」「秘伝のソースは良く研究するべし」「削り節はアジ、サバ節を使用するべし」「小倉地酒で香り豊かに仕上げるべし」(小倉焼きうどん研究所)の7項目で、このうち5項目は満たさないといけません。乾麺をゆでてからよく水を切り、そして鉄板で炒める製法は、麺のもっちり感をよく引き出してくれます。

カステラ 長崎

カステラ

ふっくら、しっとりとした食感と、甘味とコクのある銘菓「カステラ」が伝来したのは16世紀の長崎です。室町時代末期に、南蛮貿易でやってきたポルトガル人によって伝えられ、スペインのカスティーリャ王国のポルトガル発音「カステーラ」がその名の由来となったと言われています。
卵をよく泡立てて、そこに砂糖、水飴、小麦粉を加えて作るのは昔から変わらず、砂糖が豊富だった貿易港、長崎ならではの製法と言えます。スポンジケーキとよく似ていますが、いちばんの違いは牛乳やバターなどの油脂を使用しないこと。ベーキングパウダーなどの膨張剤も使いません。あの独特のふっくら感は大量の卵をよく泡立てることで生まれ、しっとり感は砂糖や水飴によるものです。
カステラを食べていると、シャリシャリとした心地よい歯ざわりを感じることがありませんか?
これは、生地に溶け残ったザラメ糖です。カステラは普通の上白糖のほかに、ザラメや和三盆、水飴など、いろんな甘味を組み合わせて使用することがあり、それらの配分は各老舗の秘伝となっているようです。

ちゃんぽん 長崎

ちゃんぽん
写真提供:長崎観光お客様ネット事業実施委員会

長崎の名物「ちゃんぽん」の具に決まりはありませんが、豚肉、えび、いか、貝、キャベツ、もやし、にんじん、玉ねぎ、たけのこ、かまぼこ、ちくわ、きくらげ、とうもろこし…など具だくさんなのが特徴です。材料を中華鍋でさっと炒めて、とんこつや鶏がらでとった濃いめのスープを加えて、別にゆでておいたちゃんぽん麺を投入し、軽く煮込んだらできあがりです。適度にスープが染み込んだ麺の食感と、いろいろな具が渾然一体となっている感じがちゃんぽんの醍醐味です。
このちゃんぽん麺が普通の中華麺と違うのは、麺が太めな点だけではありません。ちゃんぽん麺は、中華麺のようにかん水ではなく、かん水の中の「唐灰汁(とうあく)」と呼ばれるものを小麦粉に配合して製麺しているのです。唐灰汁は元々、中国で用いられた漢方薬ですが国内では長崎でしか生産されていないそうで、これが独特の風味をちゃんぽんに与えているということです。
ちゃんぽんの起源は、明治の半ばに、中国福建省から長崎に渡ってきた中国人が、当地の貧しい留学生にさまざまな具を混ぜ合わせたボリュームたっぷりの麺料理を考案して作ってあげたことに始まります。語源は中国語の「吃飯(しゃぽん)=ご飯を食べる」からきたという説が有力なようです。

皿うどん 長崎

皿うどん

「ちゃんぽん」と並ぶ長崎の名物料理「皿うどん」。長崎独特の「唐灰汁(とうあく)」と呼ばれるかん水を加えた細麺は一度蒸した後、油でさっと揚げて、パリパリとした食感に仕上げます。たっぷりの豚肉や魚介類、野菜、かまぼこなどを炒め、ちゃんぽんと同様のスープで軽く煮込んだら、あんかけに仕立てて麺の上にかけて完成。最初はサクサクッとした食感が、麺にスープが染みてくることでまた別の味わいになり、二度楽しめます。
長崎では、パリパリの細麺のほか、ちゃんぽん麺を油で焼くようにして揚げた太麺も人気です。東京などでは皿うどんには、お酢とからしが一般的ですが、長崎ではウスターソースが定番。からしとはまた異なるスパイシーさが、あんの旨味と意外にマッチします。
皿うどんは元々、ちゃんぽんの応用として生まれたと言いますが、後に中国発祥の「かた焼きそば(炸麺)」の影響を受けて、現在のような「長崎皿うどん」が定着したという説があるようです。

佐世保バーガー 佐世保

佐世保バーガー
写真提供:佐世保観光コンベンション協会

長崎県の佐世保発祥のハンバーガー「佐世保バーガー」は、何か決まった食材を使用するといった決まりはありません。佐世保観光コンベンション協会によると、定義は「「地元食材を使い、注文を受けて作り始めるこだわりハンバーガー」のみ。バンズやミートパテへのこだわりはもちろん、マヨネーズ、チーズ、ベーコン、卵、レタスやトマトといった野菜など、ありとあらゆるバリエーションで各お店が個性を競い合っています。一般的にサイズは大きめで、食べ応え十分です。
佐世保にハンバーガーがやって来たのは、昭和25年ごろ。佐世保に進駐したアメリカ海軍に提供するようになったのをきっかけに、“佐世保の味”として市民の間に根付いていったということです。今では、佐世保バーガーを目当てに多くの観光客が訪れるようになりました。

からしれんこん 熊本

からしれんこん
写真提供:熊本県東京事務所

熊本を代表する郷土料理「からしれんこん」は、酢を入れて白くゆでたれんこんの穴に、からし、みそ(九州では麦みその場合が多いです)、好みによっては砂糖やみりんを練り合わせたからしみそをたっぷりと詰め、小麦粉、卵、ウコンやクチナシなどの黄色い色素を混ぜた衣で揚げたものです。包丁で切った断面の、からしみそと衣の黄色、そして、れんこんの白とのコントラストが美しく、“先が見通せる”れんこんの縁起の良さから、熊本ではおせち料理にも欠かせない一品となっています。
このからしれんこん、元々は、病弱だった細川家の3代目藩主、忠利のために、玄宅和尚という人物が増血剤として出した同様の料理が元になったようで、これを食べた忠利はみるみる体力を回復したと言います。そのとおり、ビタミンC、食物繊維、ミネラル類などが豊富なれんこんは、ビタミンB12も多く含み、これは鉄分の吸収を高めるため貧血に良いことが知られています。

いきなり団子 熊本

いきなり団子
写真提供:熊本県

「いきなり団子」は、輪切りにしたさつまいもにあずきあんをのせ、小麦粉の生地で包んで蒸し上げたお菓子です。特に蒸したては、さつまいものほくほく感と、生地のもちもち感のマッチングがやみつきになりそうな美味しさです。
かつては、あずきあんを入れておらず、さつまいもだけを生地で包み、蒸したり、ゆでたり、揚げたりしたそうです。お菓子というよりは、主食代わりや農繁期の間食として食べられていたようで、みそやしょうゆの汁物に仕立てることもあったと言います。現在、商品として売られているいきなり団子は、黒糖あんを使ったものなど、色も味わいもバリエーション豊かになっています。
「いきなり」の由来については、短時間で「いきなり」作ることができるからとか、「いきなり」が地元の方言で「手軽で簡単な」といった意味があるから、といった説があります。

石垣まんじゅう 大分

石垣まんじゅう
写真提供:大分県

大分県の郷土菓子「石垣まんじゅう」は、小麦粉生地に約1cm角に切ったさつまいもを混ぜ合わせ、丸めて蒸したもの。ベーキングパウダーを使用してふっくら仕上げることが多く、「まんじゅう」と言うよりは、むしろ「蒸しパン」のような感じです。「石垣もち」「石垣だんご」と呼ばれることもあり、ゴロゴロとさつまいもがむきだしになった外見が、石垣を連想させることからネーミングされたものと言われます。
なお、名古屋名物「鬼まんじゅう」も石垣まんじゅうとよく似たお菓子です。こちらは表面につややかな光沢があり、食感はもっちりしたタイプが多いようで、ネーミングは同じように、表面のごつごつした感じからきているようです。

ごまだしうどん 大分

ごまだしうどん
写真提供:大分県

「ごまだし」とは、高級かまぼこの原料となるエソなどの白身魚を焼いてほぐした身に、ごま、しょうゆ、みりんなどを混ぜ、よくすり合わせてペースト状にしたもの。大分県の佐伯市を中心に伝わる伝統的な保存調味料です。ご飯や、おひたしなどの料理のトッピングにもよく合いますが、人気なのは「ごまだしうどん」。ゆでたてのうどんを器に盛り、「ごまだし」をのせてお湯をかけるだけ。ねぎを散らして、かまぼこを飾れば完成です。元々は、忙しい漁師がだしをとる手間をかけずに、すぐ食べられるよう生まれた一種のインスタント食品ということですが、お湯を注ぐと磯の香りがふわっとただよいます。

だんご汁 大分

だんご汁
写真提供:大分県

大分県を中心に九州全域で食べられる「だんご汁」。地元では「だご汁」と呼ばれることもあるこの郷土料理は、甲州の「ほうとう」や、上州の「おっきりこみ」とよく似た汁料理。小麦粉を耳たぶほどの固さにこね、よくねかせた生地をうどんよりも幅広に切り、さまざまな具材とともに、みそ味に仕立てます。
ごぼう、にんじん、さといも、大根、かぼちゃ、れんこん、ねぎ、しいたけ…といった季節の野菜や、豚や鶏などのお肉をたっぷり使い、栄養満点。家庭によってレシピは異なりますが、煮干しのだしや麦みそを使うことが多いようで、大分特産のかぼすを絞ったり、柚子こしょうをピリッときかせたりするのも九州らしいアクセントと言えます。
大分には、「だんご汁」よりも生地を細長く仕立てた「鮑腸(ほうちょう)」と呼ばれる汁料理も伝わっています。これは、鮑(あわび)の腸が大好物だった豊後の国主、大友宗麟(そうりん)に、鮑が入手できないときに小麦粉の生地で代用したものを出したのが始まりと言われます(「ほうとう」が変化して「鮑腸」になったという説もあります)。

やせうま 大分

やせうま
写真提供:大分県

うどんよりも幅広に切った小麦粉の生地を、ゆでてから水を切り、きな粉と砂糖をまぶしたものが「やせうま」です。食べごたえ十分なおやつです。
やせうまの語源については諸説あります。平安時代、大分の豊後に移り住んだ貴族の若君、藤原鶴清麻麿(つるきよまろ)が、乳母の八瀬(やせ)に作ってもらったおやつがこれで、「やせ、うま(いもの)をくれ」とねだったからという説や、馬の餌とする小麦を人間が食べてしまい、「馬がやせてしまった」といった説が伝えられています。

とり天 大分

とり天
写真提供:大分県

鶏を油で揚げる料理といえば「鶏の唐揚げ」が定番ですが、大分県でそれにもまして人気が高いと言われる名物料理が「とり天」。昭和30年代ごろに大分の食堂で誕生したと言われる「とり天」は、タレで鶏肉に軽く下味をつけてから、天ぷらの衣をからめて揚げ、酢じょうゆや天つゆをつけて食べます。鶏の部位は、もも肉やむね肉、ささ身など、さまざまですが、骨付きではなく、一口大で食べやすいのが特徴です。

沖縄そば 沖縄

沖縄そば
写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー

沖縄で「そば」と言えば、「沖縄そば」。かつては「支那そば」と言われていたとおり、中国の食文化の影響を受けたものです。
「そば」と言っても、そば粉は使いません。麺は、小麦粉に灰汁(現在ではラーメンのように、かん水を使用することが多いです)を混ぜて練り、きしめんのように平たく製麺したもの。麺をゆでたら、熱いうちに油をまぶして冷まします。食べるときにもう一度ゆでて表面の油を洗い、とんこつ、かつおなどでとった澄んだスープをかけて完成です。かつおの香りがただようスープはあっさりめ、麺にはコシがきいています。具の定番は、豚の三枚肉、かまぼこ、青ねぎなど。紅しょうがも欠かせません。たいていのお店にはコーレーグスという、赤唐辛子を泡盛に漬込んだものが置いてありますが、かけすぎは禁物です。豚のあばら肉がのる「ソーキそば」、豚足がのる「てびちそば」、豚の内臓がのる「中身そば」、よもぎがのる「フーチバーそば」など、沖縄らしい食材をのせて楽しむ、庶民のための麺料理です。

サーターアンダギー 沖縄

サーターアンダギー

サーター=砂糖、アンダー=油、アギー=揚げ物。つまり「サーターアンダギー」は砂糖の揚げ物。沖縄では「砂糖天ぷら」あるいは単に「天ぷら」とも呼ばれていますが、むしろ丸い、大きなドーナツといった感じのお菓子で、市場やスーパーの惣菜売り場では揚げたてを山積みにして売っている光景をよく見かけます。白砂糖の代わりに黒糖を使ったものや、紅いも、かぼちゃ、白ごま、ウコンなど、いろんな味のサーターアンダギーがあり、値段もお手頃なのが魅力です。
基本的な材料は、小麦粉と卵、砂糖。亜熱帯の沖縄でも長持ちするように水は使用しませんが、味や食感のために牛乳を加えることが多いようです。よくこねて柔らかめに丸めた生地を、低い温度の油の中に入れると、いったん沈み、くるくる回りながら浮かんできます。外側がぱっくり割れて、きつね色になったらできあがり。この割れ目が、「花が開いたよう」「人が笑っているよう」と形容されることから、縁起の良いお菓子となったようです。

ヒラヤーチー 沖縄

ヒラヤーチー

「ヒラヤーチー」の「ヒラ」は「平たく」、「ヤーチー」は「焼き」の意味。お好み焼きやチヂミの沖縄版といった感じですが、お好み焼きほどのボリュームはないので、おやつ感覚で気楽に食べられる郷土料理です。
ヒラヤーチーの作り方はシンプルで、水で溶いた小麦粉に味付けをし、にらなどの具材を混ぜた生地をフライパンに薄くのばして、両面を焼きあげるだけ。具にはツナを加えるのも定番。しょうゆやぽん酢のほか、ソースにもよく合い、小腹がすいたときや、泡盛のお供にもぴったりです。
沖縄には「ヒラヤーチー」によく似た、小麦粉を使った料理がほかにもあります。
「ポーポー」という、水で溶いた小麦粉をクレープのように薄く焼き、アンダーンスー(油みそ又は豚みそ)やソースを塗ってくるくる巻いたもの。
また、「チンビン」という、やはり薄く焼いた小麦粉の生地に、黒砂糖を溶かした蜜を塗って巻いたものがあります。

フーチャンプルー、ソーミンチャンプルー 沖縄

フーチャンプルー、ソーミンチャンプルー
フーチャンプルー、ソーミンチャンプルー

野菜や豆腐などを炒めた、沖縄を代表する料理が「チャンプルー」。チャンプルーは「いろいろ混ぜた」という意味なので、その具材の種類はさまざまです。最も有名なのは、ゴーヤ(ニガウリ)の入る「ゴーヤチャンプルー」でしょう。ほかにも、パパヤーチャンプルー(青いパパイヤ)、ナーベラーチャンプルー(ヘチマ)など、沖縄らしい食材を使用した料理があります。
沖縄では、「車麩」という焼き麩がよく食べられますが、この車麩を水で戻して野菜などと炒めたものが「フーチャンプルー」。戻した麩を卵液に浸し、十分に液を吸わせてから炒めることもあります。ふんわり柔らかなお麩の食感が楽しい、沖縄独特の料理です。
また、固めにゆでたそうめんを冷水でしめ、にらなどの野菜、ツナなどと一緒にさっと炒めたのが「ソーミンチャンプルー」。味付けは塩・こしょう、かつおだしであっさり仕上げます。

「ご当地粉料理」は、『小麦粉料理探求事典』(岡田哲 編/東京堂出版)、『日本の味探求事典』(同)などの書籍、官公庁や地域情報などの各種ホームページ、地域住民の方への聞きこみ、弊社資料などによりまとめました。