趣味、こだわり、男の料理

Column男の探求コラム

粉もんと漬けもん -沖縄そばには、紅生姜。編-

はじめまして。漬物男子の田中友規と申します。
個性の強い粉もんを引き立てる、名脇役の漬けもん。
この連載では、漬物専用プロダクトを自分でデザインするほどの漬物好きの僕が、めくるめく漬けもんの美味しい世界を紹介する。

連載第一回目は、ぼくの大好きな「紅生姜」のお話。
紅生姜ほどシンプルで、人を虜にする薬味はないと思っている。

本来臭み消しである生姜は、すりおろしたり、下味に漬け込んだり、
隠れたアクセントとして使われているが、こと、紅生姜の存在感は主役級。

みなさんも見たことがあるのではないか。
牛丼屋で高々と山盛りにされた紅生姜をのせた牛丼をかきこむ男の姿を。

「紅生姜の味しかしないだろ!」と思った諸君、その指摘はあまりに的外れだ。

白飯に紅生姜をドカっと乗せ、紅生姜の酸味と辛味、そして甘辛の牛肉とタマネギでバランスを保ちつつ、生卵のコクで味わう。それこそが本物の漬物好きの牛丼の食べ方なのだ。
かくいうぼくも、牛丼にはどんぶりが真っ赤になるほど紅生姜を載せる派だ。

とはいえ既製品の紅生姜は、味も切り方も均一。
自分で漬ける紅生姜は、また格別なものがあるのでぜひ試して頂きたい。

まずは根生姜を、スライサーで千切りに。
市販の紅生姜の半分くらいの細さがいい。

一般的に紅生姜は保存のために塩味を強くしているが、せっかくの自家製紅生姜。
パッと食べきれる量を、甘みと酸味を立たせて仕上げよう。

生姜に含まれるアントシアニンが、酢と反応して自然とピンク色に染まり、
美しい桜色の自家製紅生姜のできあがり。

食紅や梅赤酢などは使わない。古来から伝わる、最も自然な方法の漬物がいい。

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これさえあれば冷奴でも十分美味しいのだが、
その本領を発揮するためには、牛丼と同じく肉の脂を合わせていきたい。

そこで僕がたどり着いたのが、「沖縄そば」。

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豚の三枚肉とコシのあるゴワゴワの麺に合わせるスープは豚とカツオのダブル出汁。

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麺は卵、塩、重曹、水を混ぜた仕込み水を、強力粉に投入。

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しっかりと練りこんで1時間程度寝かす。

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5mm幅に切って、手揉みでちぢれをつける。

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茹で時間は15秒と一瞬。サラダ油を軽くまとわせて粗熱をとる。

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熱々のスープと合わせ、三枚肉、かまぼこ、刻みネギを乗せて完成。

もちろんこのままでも美味しいが、紅生姜が入ることで、全体に一本筋が通った味になるのだ。

三枚肉に紅生姜をのせてひと齧り。脂身と生姜の相性は疑いようがない。
さらにスープの絡んだ麺をざばっと吸い込み、噛み締めてみてほしい。
歯ごたえ抜群の麺の間に忍び込んだ紅生姜が、ザクッザクッとアクセントになり
その味わいをより清涼感のあるものしてくれるのだ。

肉、麺、スープ、ときどきかまぼこ。そして紅生姜をおかわり。
この繰り返しがたまらなく楽しいものになるはずだ。

最も生姜を美味しく食べたいときは、迷わず沖縄そば。
ぜひあなたにも試していただきたい。

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自家製紅生姜 レシピ

根生姜 1個(80g)
酢 200cc
砂糖 50g
塩 小さじ半

1.酢を鍋で温めて、砂糖、塩をよく溶かす。
2.根生姜はよく水で洗い、皮ごとスライサーで細めにカットする。
3.合わせた甘酢と生姜を器に移して、冷蔵庫で冷やして完成。

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田中友規さん

東京都出身/京都府在住
真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。
保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
Picklestone
https://www.excite.co.jp/news/article/Japaaan_68996/?p=2

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