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  • 2005年6月10日 日清製粉と大林組、低温でも効率的に汚染土を浄化する「バイオヒートパイル工法」の実用化を開始-掘削した油汚染土を低コスト、短工期で浄化する工法-

日清製粉と大林組、低温でも効率的に汚染土を浄化する
「バイオヒートパイル工法」の実用化を開始
-掘削した油汚染土を低コスト、短工期で浄化する工法-

日清製粉(株)(本社:千代田区、社長:中村隆司)と(株)大林組(本社:港区、社長:向笠愼二)は、掘削した油汚染土のバイオ浄化において、冬季などの低温環境下でも微生物の石油分解能力が落ちない「バイオヒートパイル工法」を共同開発し実用化を開始致しました。

日清製粉(株)は1999年から食品発酵技術を応用した堆肥化発酵促進材「アクセルコンポシリーズ」を開発・発売し、畜産・土木分野での堆肥化リサイクル技術によるエコビジネスを展開しており、今回の共同開発ではその堆肥化技術を応用しています。

一方(株)大林組は、掘削した汚染土を微生物の働きで浄化する*バイオレメディエーションで多くの実積をあげており、1990年代に国内企業として初めて、クウェートで15,000m3に及ぶ汚染土のバイオ処理を実施して以来、国内で掘削油汚染土のバイオ処理を手がけてきました。

*バイオレメディエーションとは?
有機物を分解する微生物の働きを活用し、石油やトリクロロエチレン等による土壌や地下水の汚染を浄化し無害化する技術の総称。物理化学的手法を用いた他の汚染浄化技術と比較し時間はかかるが低コストで出来る利点がある。2003年2月に施行された土壌汚染対策法を背景とした関連ビジネスが急増している。

しかしこれまでのバイオ処理は、特に冬季などの低温期には微生物の活性が下がり、更に浄化の進行が遅くなるという課題がありました。

今回開発した「バイオヒートパイル工法」は、掘削した油汚染土に、両社が今回新たに開発した小麦成分を使用した発酵助材「ヒートコンポ」を添加し、敷地内に畝状に細長く積んで、汚染土に空気を送り込むだけで、汚染土の中の微生物が活性化し、短期間で油分を分解できるものです。バイオ処理に適した温度は10℃から50℃の間であり、その中でも最適な温度は25〜40℃です。両社が共同開発したバイオ技術により、処理時の季節や気温に応じて、発酵助材の添加量、通気量を適切に設定することにより、汚染土をバイオ処理に最適な温度に保つことができ、微生物の活性が低下する冬季においても、効果的なバイオ処理が可能となることがわかりました。微生物の活性に最適な温度で効率的に処理できるので、浄化に要する工期を大幅に短縮することができます。

事業展開にあたっては、日清製粉が「ヒートコンポ」を製造し、大林組がその資材を利用して「バイオヒートパイル工法」でバイオ浄化を実施します。また、自ら浄化工事を施工できる会社には、日清製粉から「ヒートコンポ」を販売するとともに、大林組が有償で技術指導を実施いたします。

日清製粉(株)と(株)大林組が2004年10月〜2005年3月にかけて、この工法を用いて1200m3の汚染土で実施した現場実証試験の結果では、浄化開始後約2週間で温度が最高値に達し、浄化速度が最大となりました。その後浄化速度は減少し、1ヵ月後には油膜・油臭が消失し、油汚染をほぼ分解し十分な浄化効果があることを確認しました。従来のバイオ処理工法では浄化に3ヵ月かかっていましたので、この工法では最短で約3分の1に浄化期間の短縮が出来る事となります。そしてこの工期短縮等の効果により、従来のバイオ処理の工法と比較して20%ほどの大幅な浄化コストの低減も可能となります。尚、試験結果と資材の効果については、第11回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会(6/16、市川市文化会館)と2005年度環境バイオテクノロジー学会(6/27、東京大学)で発表予定です。
「バイオヒートパイル工法」の特長は、以下の通りです。

1.冬季でも施工可能なバイオ処理工法です
冬季などの低温時には微生物の活性が低下するため、バイオでの土壌浄化には、長い浄化期間がかかっていました。当工法では、施工時の季節・気温に応じてバイオ処理に最適な温度が得られるよう特殊資材添加量とバイオパイル通気量を制御するので、一年中いつでも、最速の浄化速度で油汚染土を浄化することができます。

2.低コスト、短期工程の浄化技術です
当工法ではバイオ浄化環境を最適に保ちますので、処理が最速で進行し、処理工程が短縮されます。これにより、通常でも低コストとされるバイオ処理ですが、さらにコストを低減することが可能となりました。従来のバイオ処理では3ヵ月かかっていた処理期間が1ヵ月で済みます。コストも従来法に比べ20%低減することができました。

3.掘削した油汚染土を処理できる技術です
原位置で処理するのではなく、掘削した土を処理しますので、ムラなく確実に浄化することができます。また、ガソリンや灯油、軽油などの軽質油はもちろん、重油などの重質油で汚染された土に対しても有効な工法です。

日清製粉(株)は今後「バイオヒートパイル工法」を関連業界に展開する一方、発酵促進材を活用した新たな環境保全技術を異業種コラボレーションにより開発し実用化を進め、循環型社会に貢献すべく積極的に提案して参ります。