日清製粉グループ


シリーズ・イタリアンの巨匠
第2回 「アルポルト」オーナーシェフ 片岡 護
素材を活かす、イタリア料理のヘルシー思想〈後編〉
イタリア料理は、調理方法もヘルシーを意識したものが多い。イタリア人はレストランで食事をする際も、日本人以上に栄養のバランスを考えて料理をオーダーしています。

  ----- イタリアでは食に対するヘルシー志向が日本以上に高いということですが、レストランの料理にもその傾向はありますか?
片岡: まず調理方法からしてヘルシーなものが好まれています。たとえば最近レストランでは「バプール(蒸す)」という調理方法がとても人気が高い。それと、イタリア料理はグリルがとても多いですね。フライパンではなくグリルパンで焼くので、お肉の余分な脂が落ちるんです。いわゆる遠赤外線ですね、昔は炭火だったので。
渡辺: 食材の選択についてもイタリア人はダイエットという視点から考えますね。
日本ではダイエットを意識するとお肉は鶏肉ということになりますけど、イタリアでは七面鳥だったりホロホロ鳥だったり、うさぎだったりと、選択肢も豊富です。
片岡: 面白いのは馬肉ですよ。脂は全然ないし、固くてそんなにおいしくないような部位なんですが、ダイエットを気にしている人がよく食べています。痩せたい…でもお肉を食べたいという人なんでしょうね。
渡辺: やっぱりイタリア人は日本人以上に健康を考えながら食事をしていますよね。
コース料理をオーダーするときも、日本人はおいしそうだからということでアンティパストはこれで、プリモはこれで…とオーダーしますけど、イタリア人はしっかり全体のバランスを考えてオーダーします。アンティパストは野菜にしたいから、プリモはこれにして、メインは魚にしよう…とか。
できあがったドレッシングが供されるなんてこと、イタリアではありません。ドレッシングは目の前で和えてつくるのが、いちばんおいしくてヘルシーだということを彼らは知っているんですよ。

片岡: オリーブオイルのかけ方にしても、その日の自分の体調等を考えてどうするか決めてますよね。どれぐらいの量かけるかとか、オイルは使わずレモンだけにするとか、塩は使わないようにするとか、もうサラダの食べ方だけでもいろいろあって、自分の体調とか健康に合わせて、自分の好みで食べています。
だからドレッシングは必ずセットが席に置いてある。お客さんひとりひとりが自分で自分の好みのドレッシングをつくって食べるんです。
渡辺: できあがったドレッシングが供されるなんてことはイタリアではないですよね。必ず、オイルとヴィネガー、塩、こしょう、レモンなどがセットで出てくる。
トラットリアなどはみんなそうです。高級なリストランテに行くとウェイターが「私が作りましょうか?」と声をかけてくれますが、それにしても必ず好みを聞いて、それに合わせてつくってくれます。
片岡: ドレッシングは目の前で和えてつくるのがいちばんフレッシュでおいしいってことを彼らは知っているんですよ。つくり置きしてしまうと全然おいしくなくなっちゃう…。
それに、油にヴィネガーを混ぜれば酸化してしまうわけだから、つくりたてのフレッシュなものをすぐ食べるのがいちばんヘルシーなんです。
渡辺: とっても理にかなっていますよね。
健康に良いもの、ヘルシーなものは、やっぱりおいしい。
イタリア料理は、素材の「旬」を大切にする。そして、必要以上にいじらない。実はこれは日本料理の考え方ととても似ているんです。

  ----- ずばり、イタリア料理の特徴というと何でしょうか?
渡辺: イタリア料理というと、やはり素材をいかに活かすか、ということに尽きるんじゃないでしょうか。ソースなどで変に小細工するのではなくて…。
片岡: そうですね。やっぱり“シンプルに素材の持ち味を活かす”というのがイタリア料理の最も大きな特徴といえるでしょう。ソースや味つけが大切じゃないというわけではないんですが、それ以上に、素材がもともと持っているおいしさをいかにして引き出すかというのが重要なポイントです。
だから、そのために何よりも素材の「旬」を大切にする。そして、必要以上にいじらない。
実はこれは日本料理の考え方ととても似ているんです。
渡辺: なるほど。日本でイタリア料理がこれだけ人気があるのは、そういう点が似ているからかもしれませんね。
片岡: そうですね。そして、逆にイタリアにも日本の食文化の影響がいろいろあります。
イタリアで生魚のカルパッチョが登場したのは1980年代になってから。日本の刺身の文化が影響しています。
また、マルケージ(※)が冷製パスタを考案したのは、日本に来て蕎麦をすごく気に入ったからです。
渡辺: 最近でもイタリアへ修業に行っている日本のコックさんが、日本の調理方法や食文化をいろいろ伝えていますよね。
たとえば、野菜のゆで方。パスタはアルデンテにゆでるので意外かもしれませんが、野菜はしっかりとくたくたになるまでゆでるのがイタリアのやり方でした。しかし最近はコリコリした食感を楽しむようなゆで方も出てきた。これは、ゆでたあと氷水に取る日本の調理方法を取り入れたんだと思います。
片岡: イタリアに限らず、今、日本の食文化はヨーロッパにとても大きな影響を及ぼしていますね。このような料理のグローバル化はこれからもどんどん進むでしょう。
※マルケージ:
グアルティエーロ・マルケージ氏。1970年代後半、伝統的なイタリア料理に新風を吹き込み、“ヌオーヴァ・クチーナ”(新イタリア料理)の旗手として活躍。イタリアで初めてミシュランの3ツ星を獲得したイタリア料理界の巨匠シェフ。
片岡護
レストラン「アルポルト」オーナーシェフ
日本を代表するイタリア料理界の巨匠。ミラノの日本総領事館で5年間修業した後、「小川軒」「マリーエ」を経て1983年、東京・西麻布に「アルポルト」を開店。日本におけるイタリア料理界の草分け的存在であり、イタリア料理のアドバイザーとしてテレビや雑誌等でも広く活躍中。「和の素材でイタリアン」(講談社)など著書も多数出版されている。


渡辺陽一
レストラン「パルテノペ」総料理長
昭和59年に渡伊し、在ローマバチカン日本大使館・大使付料理長に就任。その後10年間に渡る修業を重ねイタリア国内のリストランテの料理長をも経験。帰国後も第一線のイタリアンシェフとして活躍中。得意とするのは南イタリアの伝統的な地方料理、特に6年間滞在経験のあるナポリの郷土料理。
この対談は、イタリア料理レストラン「アルポルト」で行われました。
イタリア料理 アルポルト
港区西麻布3-24-9
TEL:03-3403-2916
営業時間:昼11:30〜15:00(L.O.13:30)/夜17:30〜23:00(L.O.21:30)
定休日:月曜
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