おいしいパンのあるところに、おいしいスイーツあり。パンコーディネーターが選ぶ!パン屋さんのスイーツ おいしいパンのあるところに、おいしいスイーツあり。パンコーディネーターが選ぶ!パン屋さんのスイーツ
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アメリカのクラシックな焼き菓子を進化させた新しいコーヒーケーキのカタチ アメリカのクラシックな焼き菓子を進化させた新しいコーヒーケーキのカタチ

横浜元町から山手に向かう坂道にある、ブルーのドアが目印のbluff bakery。オーナーの栄徳シェフがこだわり抜いた素材を使って作り上げた独創的なパンと、奥様の友紀さんが作る異国情緒あふれる焼菓子やサンドイッチがたのしめるお店です。店に入ると、正面にあるブルーの照明で浮かび上がった大きな窓がいつも印象的で、ベーカリーにいながらアトリエや美術館の中にいるような不思議な感覚になります。

bluff bakeryのコンセプトは「自由なパン」。パン作りの常識や定説にとらわれず自由な発想から生まれたユニークな商品を、パン、ケーキ、お菓子……といろいろなカテゴリーで取り揃え、アメリカのマーケットのようなたのしい売り場をイメージ。メインのパンも、他のベーカリーには無い珍しいパンやみんなが知らないパンを提案することで、お客様の気持ちがワクワクする、そんなお店を目指しているそうです。また、横浜山手という土地柄、帰国子女や外国人のお客様も多く、滞在していた国や自国を懐かしみながら食べてもらえるようなケーキや、ティータイムに合う商品などにも特に力を入れています。

今回は、2010年のbluff bakery開店当初からある人気の焼き菓子の中でも、私が絶対におすすめしたいコーヒーケーキ(コーヒーに合うケーキのこと)、『キャロットケーキ』と『バナナブレッド』をご紹介します。

『キャロットケーキ』2円/g(税込)

『キャロットケーキ』2円/g(税込)

キャロットケーキとは一般的に、細かくした人参をクルミやスパイスとともに練り込んだ素朴な焼菓子のことで、日本では売られている店があまりなく、見かけると必ず購入するほど好きなケーキのひとつです。bluff bakeryの『キャロットケーキ』の特徴は、大きく分厚く焼かれているので、しっとりとした食感で食べやすく、生地に練り込まれた薫り高いシナモンと大ぶりのクルミのアクセントが引き立っていること。また、表面にたっぷりとトッピングされている濃厚なクリームチーズフロスティングと食べると絶品で、とにかくブラックコーヒーとの相性は抜群です。

bluff bakeryの『キャロットケーキ』誕生のきっかけは、1993年に友紀さんがサンフランシスコに留学していた際のこと。キャロットケーキはアメリカのどこのカフェにもある定番メニューのひとつでしたが、どれもパサパサとした食感で「もっと大きく焼いてカットした方が、しっとりとおいしいのでは……?」と考えていたのが始まりだそうです。

bluff bakeryでは、上品過ぎない素朴な味わいを出すために、薄力粉だけでなくハード系パンによく使われる「リスドオル」も用い、大きなケーキ用の型を使ってデッキオーブンで分厚くしっとりと焼き上げており、焼いてから2~3日の間はおいしく食べられます。(冷蔵庫保管)

よりおいしくする食べ方として私が提唱したいのは、『キャロットケーキ』を電子レンジで軽く温めて、ややスパイシーな風味の温かいブラックコーヒーとペアリングすることです。温めることでスパイスの香りがいっそう引き立ち、少しトロッとやわらかくなったクリームチーズフロスティングに絡めて口に入れれば、心がホッと落ち着く至福の瞬間。一方、冷蔵庫で冷やしておいても、クリームチーズフロスティングが冷えたバターのようなコクをもち、温めた時とはまた違う、生ケーキのようなリッチな味わいをたのしめます。

そしてもう一品、こちらもコーヒーのお供としてはもちろん、朝食にもぴったりな『バナナブレッド』をご紹介します。

『バナナブレッド』540円(税込)

『バナナブレッド』540円(税込)

バナナブレッドも、キャロットケーキ同様アメリカの家庭やカフェで日常的に食べられている定番の焼菓子です。現地ではマフィン型で焼かれていたり、大きなローフ型で焼き上げ、スライスで売られていたりと様々ですが、生地に練り込まれた生バナナの素朴な甘みと香りが共通の特徴で、ティータイムのおやつだけでなく朝食にもよく食べられています。

私自身、バナナブレッドは必ずと言ってよいほど朝食として食べていますが、bluff bakeryの『バナナブレッド』は、「リスドオル」に薄力全粒微細粉を加えることでザクッとした素朴な食感と風味を生み出し、毎日食べても飽きのこない味わいに仕上げているのが特徴です。ペアリングは、ブラックコーヒーよりもミルクたっぷりのカフェオレの方が相性◎。ミルクのコクがバナナの優しい甘みを引き立て、幸福な気持ちで一日のスタートを切ることができます。


bluff bakeryの商品はすべて、栄徳夫妻の人柄でもある「たのしく・自由な」世界観が表現されていると感じます。そして、アート的な表現とおいしさの奥には、裏打ちされた精密な製パン理論が確立されているので、そのお話をうかがうのも、いつもたのしい時間です。


店舗情報

Bluff Bakery(ブラフベーカリー)

住所 :
神奈川県横浜市中区元町2丁目80-9 ヒルクレストオグラ1F
TEL :
045-651-4490
営業時間 :
8:00~18:30
定休日 :
無し
  • おすすめのパン :『マラサダ(シナモン)』『ドーナツ各種』

この記事を書いた人

稲垣智子

稲垣智子

(一般社団法人 日本パンコーディネーター協会代表)

学生時代に出場したテレビ東京 テレビチャンピオン「パン通選手権」での準優勝を機にベーカリー業界へ。スターバックス コーヒー ジャパン(株)の商品開発を経て2007年に一般社団法人 日本パンコーディネーター協会設立。著書に『毎日食べたいごちそうパン料理』( 河出書房新社)、『知識ゼロからのパン入門』(幻冬舎)、共著に「ゼロから始める個性派ベーカリー」(グラフィック社)など。

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  • 日本パンコーディネーター協会

※掲載されている内容は2017年3月31日現在の情報です。