
イベントレポート Vol.11
「食物繊維の機能性について学ぶセミナー」開催
「食物繊維の機能性について学ぶセミナー」(日本栄養大学出版部・株式会社日清製粉グループ本社共催)を2026年2月20日(金)、日本栄養大学駒込キャンパス(東京都豊島区)にて開催しました。本セミナーは、管理栄養士、栄養士、食の仕事に従事している方を対象に、食物繊維の機能性について正しく学び、職場などで実践していただくことを目的に開催しました。会場参加のほかオンラインでも同時配信し、400人を超える方々に参加いただきました。
「食物繊維の機能性について学ぶセミナー」(日本栄養大学出版部・株式会社日清製粉グループ本社共催)を2026年2月20日(金)、日本栄養大学駒込キャンパス(東京都豊島区)にて開催しました。本セミナーは、管理栄養士、栄養士、食の仕事に従事している方を対象に、食物繊維の機能性について正しく学び、職場などで実践していただくことを目的に開催しました。会場参加のほかオンラインでも同時配信し、400人を超える方々に参加いただきました。
第一部(前半)「スポーツ栄養における食物繊維の働きと重要性」
第一部の前半は、日本栄養大学の上西一弘教授が登壇し、自身が携わるスポーツチームの食事指導の経験を交えながら、いまスポーツ栄養の現場では食物繊維がどう注目されているのかについて講演しました。
上西教授はまず、「日本人の食事摂取基準2025年版」をもとに食物繊維の働きとして、食物繊維の摂取量と生活習慣病との関連が数多く報告されていること、摂取量が多いと排便頻度が高いことや慢性便秘の改善に効果的であることを紹介。

次に、食物繊維の摂取量について、健康への効果を考えた場合、成人では少なくとも1日25gの摂取が望ましいと考えられていますが、実際の日本人の摂取量は大きく不足しており、実現できる可能性が低いため、成人の摂取量の中央値である13.3g(「平成30年・令和元年国民健康・栄養調査」より)と25gの中間値である19.2gを「参照値」とし、それを基準に性別・年齢区分別の「目標量」が算出されていると解説しました。しかし、「令和6年国民健康・栄養調査」を見ても、やはりまだ成人のほとんどの年齢区分で目標量に達しておらず、特に若い人はそれが顕著であり、意識的な摂取が必要だと指摘しました。
続いて、今回のテーマであるスポーツ栄養の話に。たくさん食べることだったり、体重管理のために食べすぎないことだったり、競技によって違いはあっても、スポーツ選手にとって「食べる」ということはとても重要であるとしたうえで、「食べることの重要性は、排泄の重要性でもある」と述べ、スポーツの現場で広がる「腸活」の考え方を紹介しました。スポーツ選手の栄養をサポートする際には「何を食べるか」だけでなく「排便状況がどうか」まで確認し、食べることと出すことを両輪でコントロールすることが、スポーツ栄養における腸活の1つであると説明しました。

では、なぜスポーツ選手に腸活が必要なのでしょうか。それは、腸内環境とスポーツパフォーマンスが密接に関係していることにあります。スポーツ選手はトレーニングがハードになるほど腸内の悪玉菌が増え、腸内環境が悪化しやすくなります。これが下痢や炎症の原因になり、結果的にコンディションやパフォーマンスに影響するため、それを防ぐための腸活が必要とされているのです。
発酵食品や食物繊維を摂取して善玉菌を増やし、腸内環境を改善すると、消化・吸収がスムーズになり、栄養素やエネルギーの確保につながります。また、免疫機能の維持にも関与すると考えられており、感染予防や体調管理のために大切です。実際に、冬場の大きな大会ではインフルエンザなどの流行がチーム全体の成績を左右する例もあり、「日常的な腸内環境の管理が重要」と力を込めました。さらに、疲労回復やメンタル面にも腸内環境が関係するとされており、つまり、「腸活がうまくいけばコンディションやパフォーマンスの向上を目指せる、いまでは多くのチームが腸内環境に注目し、腸活に力を入れている」と述べました。
さらに、食物繊維の水溶性と不溶性についても触れ、「両方をバランスよく摂取することが大切」であり、特に短鎖脂肪酸を大腸の中で上手に産生させる環境をつくってあげること、また、大きな大会の直前には、ガスや腹部不快感を避けるため、食物繊維の摂取を控えることも重要であると加えました。
最後に、上西教授は「これまでスポーツ栄養ではエネルギーや鉄、カルシウムなどが中心だったが、いまは食物繊維も重要な要素として位置づけられている。選手自身や支える側が学びながら実践していくことが大切」と締めくくりました。
第一部(後半)「食物繊維の機能性について」
後半は、日本栄養大学の香川靖雄副学長が登壇しました。
冒頭で香川副学長は、食物繊維には大きく「不溶性」と「水溶性」があることを示し、セルロースを代表とする不溶性食物繊維は、食材に含まれている量が水溶性食物繊維よりも圧倒的に多く、一方で、発酵性食物繊維に分類される種類は水溶性食物繊維の方が多いと説明しました。また、多くの人が食物繊維摂取の目標量を下回っている現状に触れ、その主な原因として、穀類、野菜、豆類の摂取の大幅な減少が挙げられ、特に穀類の影響が大きいと指摘しました。

次に、「発酵性」と「非発酵性」、「不溶性」と「水溶性」の区別のほか、短鎖脂肪酸がつくられる過程を解説。また、食物繊維の働きは一つや二つの臓器だけでなく、胃では食物の滞留時間を増加させたり、小腸では胆汁酸の取り込みを介してコレステロール値を低下させたり、大腸では糖やコレステロールを吸収したり、さらには肝臓・膵臓(すいぞう)・血液など全身へ影響が及ぶとし、こうした広範な働きは「多面的効果」と呼ばれていると述べました。
続いて、発酵性食物繊維を摂取した場合、大腸内のどこで発酵しやすいかは種類によって異なり、大腸の入り口付近、中間部、出口付近、それぞれにすむ善玉菌に応じた発酵性食物繊維をとる必要があるため、特定の食品だけに頼るのではなく、穀類・豆類・野菜・海藻・果物などを組み合わせ、多様な発酵性食物繊維をとることが、腸内環境を整えるうえで有効だと語りました。

講演後の質疑では、「食物繊維の摂取量を増やすとおなかが張るが、これは短鎖脂肪酸がつくられているという良いサインなのか」という質問が寄せられました。香川副学長は、短鎖脂肪酸がつくられる過程で水素やメタンなどのガスも生じるため、ある程度の張りは起こり得ると説明。そのうえで、急に増やすのではなく、まずは少量(3~5g程度)から始め、1週間ごとに2~3gずつ増やしていくと、おなかが張りづらく、腸内細菌が安定し症状が落ち着きやすいとアドバイスしました。
「食物繊維や発酵食品、運動を取り入れても便秘が改善しない」という相談に対しては、便秘にもタイプがあるとして、発酵性食物繊維を一時的に減らす工夫や、状況に応じた対応の必要性を紹介。過発酵が疑われる場合には、製品化された食物繊維(例:サイリウム)や海藻類など、合う素材へ切り替える選択肢も示しました。乳幼児の便秘に関しては、食物繊維や水分だけでなく体温管理が重要で、腹部を温めるなど多面的な対応が必要だと述べました。
第二部「年代別の上手な食物繊維のとり方」
第二部では、管理栄養士・料理研究家の牧野直子先生が、食物繊維を年代別にどのようにとればいいのかをレシピとともに紹介。会場では、小豆とベーコンのワイン煮をトルティーヤで挟んだ「ケサディージャ」(1食分あたりの食物繊維量4.9g)が振る舞われました。
牧野先生はまず、資料をもとに、日本人の食物繊維摂取量を年代別に解説。14歳以下は給食でカバーされていることもあり比較的目標量を満たしている一方で、15~19歳の女性、20~50代の男女では不足が目立つと説明しました。若い世代で不足が続くことは将来的な健康リスクにもつながる可能性があるとして、早い段階からの食習慣の見直しの重要性を訴えました。
次に、食物繊維源になる食品(穀類、芋類、豆類、種実類、野菜類、果実類、きのこ類、海藻類)を挙げ、何をどれくらいといった細かい計算をするよりも、まずはこれらを満遍なくとることが、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方をとるためのポイントだと述べました。そして、各食品が目標量に対して足りているのか、また、足りていない場合はどうやってとればいいのかを年代別に説明しました。
<穀類>
米離れや繊維を取り除いた加工食品の増加の影響で、全体的に摂取量が減っている。
→幼児期ならお菓子ではなく補食でとる。学童期は夏休みなど給食がない日の昼食でもしっかり主食をとる。青年期は運動量に合わせて主食をとる。青年期・成人は糖質と一緒に食物繊維の摂取量も減ってしまうため「糖質オフ」に注意(特に女性)。高齢者は麺類を好む傾向にあるが、そうめんやうどんよりもそばやスパゲッテイを選ぶ。全年代共通で精製度の低い穀物を選ぶ。食物繊維を強化した製品を活用する。
<芋類>
幼児期・学童期はほぼ満たしている。青年期・成人・高齢者は半量程度しかとれていない。
→全年代共通で豚汁、ポタージュ等の汁物に入れる。皮ごと調理する。あらかじめ蒸したりゆでたりしておく。芋類の冷凍食品を常備しておく。
<豆類>
高齢者は7〜8割とれているが、若い世代は半量程度しかとれていない。
→全年代共通で蒸し豆やドライパックを常備し、サラダやスープ、肉料理に混ぜる。小豆やいんげん豆が使われている和菓子を選ぶ。
<種実類>
1日何gという明確な目標量は定められていない。
→全年代共通でアーモンドやカシューナッツは小袋1つで約1g前後の食物繊維がとれるが、エネルギーが高いため食べ過ぎないように。和え物やサラダに加える。すりごまを活用する。栗も種実であるため、栗まんじゅうなどをおやつでとる。幼児期や高齢者は誤嚥(ごえん)に注意。
<野菜類>
8歳以上は1日350g以上が目標量。全体的に不足しているが、特に20代では半量程度しかとれていない。
→幼児期は苦手な野菜の調理を工夫する。学童期は夏休みなど給食がない日の食事に気をつける。青年期・成人は副菜だけでなく主食や主菜にも野菜を使う。高齢者はかさを減らす、柔らかくするなど調理を工夫する。惣菜を利用する。全年代共通ですぐに食べられるよう野菜を下ごしらえしておく。市販のカット野菜や冷凍野菜を使う。
<果実類>
全体的に不足しており、値段が高いなどの理由で特に若い世代がとりづらくなっている。
→幼児期・高齢者はおやつや補食でとる。学童期は夏休みなど給食がない日の食事に注意。全年代共通でカットフルーツや冷凍食品、缶詰、ドライフルーツを利用する。
<きのこ類>
全体的に不足している。
→幼児期・高齢者は細かく刻んで食べやすくする。全年代共通で冷凍や常備菜で補う。
<海藻類>
1日何gという明確な目標量は定められていない。
→毎日は難しいため、週3〜4回を目安に。全年代共通でひじき煮などの常備菜やのりなどの乾物で補う。
最後に、「盛岡冷麺」「きのこ肉みそ担々麺」「ケサディージャ」のレシピを紹介。「レシピで使用している商品をお土産でお持ち帰りいただけますので、ご紹介した常備菜を組み合わせるなどして、ぜひ食物繊維リッチメニューを作ってみてください」と呼びかけ、講演を締めくくりました。



セミナーにご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
日本栄養大学 副学長
香川靖雄
日本栄養大学 教授
上西一弘
有限会社スタジオ食(くう)代表・管理栄養士・料理研究家
牧野直子
