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2021.05.26 Wed

発酵の力で「こころ」と「からだ」を笑顔に

昔から日本の食卓に欠かせない食材だった「発酵食品」。長年私たち日本人の食を支えてくれた発酵食品は素材の旨味を引き出し、健やかな食生活を送ることができるといわれています。近年では、発酵食品に含まれる酵素力が腸内環境を改善する 1), 2), 3)ことや、その他にも生活習慣病の進行をゆるやかにする 4)ことも研究されており、健康維持への効果にも注目が集まっています。

忙しい毎日を過ごす中で、発酵食を取り入れた食事を作るのはめんどうくさい!と思われていることが多いですが、実はとても簡単に取り入れることができます。毎日の食卓に発酵食を取り入れて、「こころ」と「からだ」を笑顔にしていきましょう。

昔から日本の食卓に欠かせない食材だった「発酵食品」。長年私たち日本人の食を支えてくれた発酵食品は素材の旨味を引き出し、健やかな食生活を送ることができるといわれています。近年では、発酵食品に含まれる酵素力が腸内環境を改善する1), 2), 3)ことや、その他にも生活習慣病の進行をゆるやかにする 4)ことも研究されており、健康維持への効果にも注目が集まっています。

忙しい毎日を過ごす中で、発酵食を取り入れた食事を作るのはめんどうくさい!と思われていることが多いですが、実はとても簡単に取り入れることができます。毎日の食卓に発酵食を取り入れて、「こころ」と「からだ」を笑顔にしていきましょう。

発酵食ってそもそもなに?

発酵とは、微生物、またはそれらが生産する酵素の働きによって人間にとって有益なものが作り出されることをいいます。食品で例えると、食べものの成分・味・風味によい変化が起こることをいいます。発酵に関わる微生物にはたくさんの種類がありますが、代表的な微生物として次の5種類をあげます。

これらの菌の活動によって作られた食品を発酵食品といい、食卓で見かけないことがないくらい私たちの食生活の一部となっています。

今回は数ある菌の中でも、日本の発酵文化になくてはならない存在といわれる「麹菌(黄麹菌 コウジカビ)」を使った発酵食品をご紹介します。

〇麹菌(コウジカビ)から作られる発酵食品「麹」
「麹」とは麹菌(コウジカビ)を、蒸したり煮たり炒ったりした穀物(米・麦・大豆)に植え付けて繁殖させたものの総称です。日本酒・みそ・しょうゆ・みりん・酢などの製造に使われており、日本の食文化の発展に大きく関わっています。近年注目されている「甘糀(甘酒ともいわれます)」「塩糀」「しょうゆ糀」も「麹」がもとに作られています。

※「麹」と「糀」の表記の違いについて
「麹」は中国から伝わった漢字で、現在では米・麦・豆などから作られる「こうじ」全般を表しています。それに対して「糀」は、明治時代にできた和製漢字であり、米からできる「米こうじ」のみを表しています。米糀の様子が、米の上に白い花が咲いたかのように見えることから「糀」となったといわれています。

はじめてみよう!簡単発酵調味料作り

難しそうに見える発酵調味料ですが、実はとっても簡単。自然の力でおいしく旨味高い調味料が作れます。手で揉みこんだりしながら作りますので、手をしっかり洗い清潔な状態にしてからはじめましょう。

■塩糀
〈材料〉
200g
60g(乾燥糀の場合は70g)
220ml(乾燥糀の場合は260ml)

〈作り方〉
1.
糀をボールに入れてバラバラになるまでほぐし、塩を加えて手で握りながら揉みこむ。全体をまんべんなく均一となるようによく揉みこんだのち、水を加えてかき混ぜる。
2.
清潔な容器に移し替える。容器は少しゆるめにふたをし、空気が出入りできるようにする。全体がよくなじむよう1日1回以上かき混ぜる。
3.
1週間~10日間、常温で発酵させ粒が柔らかくなりとろみが出てきたら完成。冷蔵庫で3か月程度おいしく召し上がれます。
■しょうゆ糀
〈材料〉
200g
しょうゆ
300ml(乾燥糀の場合は380ml)

〈作り方〉
1.
糀をボールに入れてバラバラになるまでほぐす。しょうゆを加えて混ぜ合わせる。
2.
清潔な容器に移し替える。容器は少しゆるめにふたをし、空気の出入りができるようにする。全体がよくなじむように1日1回以上かき混ぜる。
3.
1週間~10日間後、粒が柔らかくなりとろみが出てきたら完成。
■甘糀
〈材料〉
300g
炊いたご飯
2合分
300ml(乾燥糀の場合は380ml)
※冷たいご飯を使用する場合はお湯を使用する。

〈作り方〉
1.
炊飯器の中のご飯に水(冷たいご飯の場合はお湯)を注いでかき混ぜ、60℃前後の温度にし、糀を全体に混ぜ合わせる。
2.
炊飯器の保温ボタンを押し、ふきんをかける。炊飯器のふたをあけた状態で10時間程度おく。
3.
甘くなっていたら完成(上の方がカピカピしていても全体をなじませて少しおいておけば問題ありません)。でき上がったら粗熱を取り、冷蔵庫へ。

発酵調味料のQ&A

〇食材を漬ける時はどれくらいの量が必要?

→食材の8~10%量を使用するのが目安です。

〇常温で保存できますか?

→塩糀・しょうゆ糀は常温で保存できます。発酵は進みますが発酵過程においての味の違いを楽しめます。 甘糀はでき上がったらすぐに冷蔵庫へ入れてください。常温保存はできません。

〇でき上がった塩糀の色が真っ白にならない。

→塩の成分の違いで、灰色や黄色がかった色になる場合もありますが問題ありません。

〇塩糀・しょうゆ糀をヨーグルトメーカーで作る場合の温度・時間の目安は?

→45℃・24時間程度ででき上がります(途中で数回混ぜてください)。

〇甘糀が10時間おいても甘くならない場合は?

→発酵は自然の現象なので、その時によっては甘くなる時間が変わることもあります。1~2時間発酵時間を長くしてみてください。

〇しょうゆ糀のしょうゆの種類は何がいいですか?

→本醸造のしょうゆを使用してください。

作った発酵調味料で
おいしく簡単な料理を作ってみよう!

いつものそうめんをおいしく簡単ヘルシーに。トマトとおみそと甘糀で作るソースは絶品。甘糀の自然な甘さとトマトの酸味は大人からお子さままで大好きな味!おみそを使うことでお肉を使わなくてもコクと旨みのある一品になります。たまにはお肉をぬいたベジタブルメニューで胃腸を休めましょう。
〈材料〉2人分
熟成極み 讃岐素麺
2束(160g)
◎カットトマト缶
150g
◎チェリートマト
5粒
大葉
10枚
◎白胡麻
大さじ1
◎みそ
30g
◎甘糀
50g
◎しょうゆ
大さじ1/2
◎にんにくチューブ
小さじ1
◎オリーブオイル
大さじ1・1/2
◎塩
少々
〈作り方〉
1.
チェリートマトはヘタを取り4つ割りにする。大葉は細切りにする。
2.
ボールに◎の材料を入れてよく混ぜる。
3.
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、規定の時間通りにそうめんをゆで、ざるに上げて流水で洗い、しっかり水気をきる。
4.
2のボールにそうめんを入れてよく和え、塩で味をととのえる。お皿に盛り、大葉をのせて完成。

疲労回復にはビタミンB1が多く含まれている食材をとるとよいといわれています5)。豚肉や大豆はビタミンB1が豊富に入っている食材です5)。豚肉は塩糀に漬けることで肉の旨味や甘みが増します。また、発酵調味料の成分で柔らかくしっとりした仕上がりにもなります。疲れ気味の時は、さっぱり元気になるお料理を。

〈材料〉2人分
豚ロース肉切り身
2枚(250g前後)
塩糀
豚肉の分量の10%量
◎なす
1本
◎舞茸
40g
◎ミックスビーンズ
50g
バルサミコ酢
大さじ1・1/2
しょうゆ糀
大さじ1
オリーブオイル
大さじ2
にんにくチューブ
小さじ1/2
塩・こしょう
少々
〈作り方〉
1.
豚肉は塩糀に漬け6時間~1日冷蔵庫でねかせる。なすは1cm角に切る。舞茸は食べやすいサイズにさく。
2.
フライパンにオリーブオイルを大さじ1ひき、にんにくを入れ香りを出す。◎の材料を入れ塩・こしょうし炒める。
3.
野菜がしんなりしてきたらバルサミコ酢・しょうゆ糀を入れ炒め煮にし、ソースの完成。
4.
別のフライパンにオリーブオイル大さじ1を入れ、塩糀に漬けた豚ロース肉を中火で両面しっかり焼く。
5.
お皿に盛り3のソースをかける。最後に粉チーズを振り完成。

  • 1) 阪本真由子,酒谷真以,J. Ferdouse,浜島浩史,松永陽香,柘植圭介,西向めぐみ,柳田晃良,永尾晃治,光武 進,北垣浩志:日本醸造学会誌,112, 655 (2017).
  • 2) H. Hamajima, H. Matsunaga, A. Fujikawa, T. Sato, S. Mitsutake, T. Yanagita, K. Nagao, J. Nakayama & H. Kitagaki: Springerplus, 5, 1321 (2016).
  • 3) Y. Yang, A. Iwamoto, T. Kumrungsee, Y. Okazaki, M. Kuroda, S. Yamaguchi & N. Kato: Nutr. Res., 44, 60 (2017).
  • 4) K. Soda, Y. Dobashi, Y. Kano, S. Tsujinaka & F. Konishi: Exp. Gerontol., 44, 727 (2009).
  • 5) 田中明, 蒲池桂子. あたらしい栄養事典,日本文芸社. p.61, p.82, p.172-173(2016).

<監修>

矢路川結子

料理家、発酵食エキスパート1級、スパイスハーブコーディネーター、薬膳コーディネーター、発酵×スパイス食堂Yajikko KITCHENオーナー。レシピ開発・スタイリング・撮影の他、セミナー講師も務める。