湯捏粉®(ゆごねこ)

誰でも手軽においしいを叶える

簡単に“もっちり感”を生み出す「湯捏粉®」の開発

製パンメーカーでは、食パンをもっちりとした食感にするために、一般的に「湯種(ゆだね)製法」が用いられます。しかし、この製法は使用する小麦粉の一部に熱湯を加え混ぜることで、小麦粉の主成分である澱粉をα化させる作業工程が必要であり、手間がかかります。そこで、湯種製法を用いなくても、水で仕込むことで簡単に“もっちり感”を実現できる業務用食パンミックスの需要が今後高まることを予測しました。

こうした背景を受けて、日清製粉グループは、簡単な作業工程でもっちり感を生み出す食パンミックス用の新たな小麦粉「湯捏粉®(ゆごねこ)」の開発に着手しました。今後の市場拡大を見据え、グループ内で連携して取り組むべき研究テーマと位置づけ、日清製粉グループ本社・日清製粉プレミックス・日清製粉ウェルナが共同で研究開発を進めました。

  • ※ 水を加えて加熱することにより澱粉が糊状になること。

湯捏粉®使用時のメリット

湯捏粉®使用時のメリット

目標とする品質を実現するための製造条件を追究

水で仕込んでもっちり感を出すためには、小麦粉に含まれる澱粉をあらかじめα化させておく必要があります。そこで、当社グループでこれまで培ってきた小麦粉の熱処理技術を活用することにしました。

開発にあたり一番の課題となった点は、小麦粉を熱処理すると澱粉はα化するものの、グルテンを形成するもとになるタンパク質が変性し、製パンにおける作業性の悪化や食パンのボリューム低下が発生してしまうことでした。そこで、できるだけタンパク質の変性を抑えた上で、澱粉をα化できる製造条件を探索しました。目指していた品質に到達するまで苦労しましたが、試行錯誤の結果、もっちり感を実現できる小麦粉を完成させ、「湯捏粉®」と名付けました。そして、「湯捏粉®」を使用した食パンミックスを市場に送り出すことができました。

湯捏粉®の特徴

グループ内シナジーを発揮した研究開発

当社グループの強みは、グループ内でシナジーを生み出せることです。今回の開発においても、日清製粉の高品質な小麦粉を使用し、これまで培ってきた小麦粉の熱処理技術をベースに、日清製粉グループ本社がもっちり感を出すための基盤技術を開発しました。その技術を活用して、日清製粉プレミックスが製品設計を行い、日清製粉ウェルナと共同で製造ラインに落とし込みました。互いが保有する技術を活かしながら融合させることで、新しい特長を持つ小麦粉を使用した食パンミックスを完成させることができました。

今後は、「湯捏粉®」の用途拡大に向けて、家庭用パンミックスへの活用や和菓子用ミックスにも展開していく計画です。また、日本人が好むもっちり感はほかのアジア地域でも受け入れられる素地があるため、日清製粉プレミックスの海外事業場にも熱処理技術を展開し、今後の事業拡大の足がかりとしていきます。

日清製粉プレミックスが培ってきたノウハウを後輩に伝えるとともに、グループ内でシナジーを発揮しながら新たな技術に挑戦することで、お客様の期待を超える価値を創造できるよう、努力し続けていきます。

日清製粉プレミックス株式会社 R&Dセンター
伊藤 浩一(右)

お客様のニーズだけでなく、当社が持つ技術やノウハウから新しい価値のある製品を提供できるよう、新規技術への高い感度と挑戦する姿勢を持った研究者を目指し、研究に取り組んでいきます。

株式会社日清製粉グループ本社 R&D・品質保証本部 基礎研究所
佐藤 開(左)

※ 所属は取材当時