やくだつ読みもの

MAGAZINE

糖質コントロールでエネルギーアップ!
カーボローディングをマスターしよう
第1回

太る?どんな効果がある?
方法は?
正しく知ろう!
カーボローディングの基本

フルマラソンやロードバイクなど、持久力が必要となるスポーツを楽しむ方が増えています1)2)。がんばるぞ!と意気込む一方で、後半になるとすっかり疲れてしまい最後まで楽しめない…という方もいることでしょう。そんなときは、プロのアスリートも実践する「カーボローディング」で、エネルギッシュな体に調整してみてはいかがですか。

※カーボローディングは血糖値にも影響を与えるため、糖尿病や脂質異常症など、健康面で差し支えがある場合は実施しないようご注意ください。内臓に負担がかかることも考えられますので、試合などの当日にいきなり行うことはせず、徐々に慣らしながら、自身の体調と相談しながら行いましょう。

プロのアスリートも実践!
体にエネルギーを充満させる
「カーボローディング」とは?

「カーボローディング」と聞いても、一般の方には馴染みがなく何のことかわからないですよね。プロのアスリートが実践しているくらいだから何か特別なトレーニング法?と思った方もいるかもしれません。

実は、カーボローディングは“食事方法”です。カーボとは炭水化物のこと。試合中にエネルギー切れを起こさず長時間パフォーマンスを発揮できるように、体を動かすエネルギー源である炭水化物を試合前にできるだけ体内にため込んでおくための食事戦略のことなのです。

まずは、体を動かすエネルギーについて理解しておきましょう。炭水化物は、三大栄養素の一つで、体を動かすのに必要なエネルギー源です。炭水化物は糖質と食物繊維に分けられますが、エネルギー的には炭水化物といえばほぼ糖質と考えてよいでしょう。食事により摂取した炭水化物(糖質)は、体内で分解されグルコースという形になります。実は、体を動かすのに使われるのが血中や筋肉のグルコース。エネルギーとしてすぐに使われないグルコースは鎖状につながり、筋肉や肝臓に「グリコーゲン」として貯蔵されることになります。そして、筋肉内のグリコーゲンが運動などにより消費されて少なくなっていくと、肝臓のグリコーゲンが分解されグルコースとなり、血液中に放出されエネルギーとして使われるのです。

長時間体を常に動かしているようなスポーツではグリコーゲンの消費量が多く、試合終盤にエネルギーが枯渇してしまいパフォーマンスが低下してしまうということが起こります。それを最小限にとどめるために、試合前にカーボローディングを行い、少しでも多くエネルギーを貯蔵しておくのです。

体内のグリコーゲンを増やすなら、普段から炭水化物(糖質)をたくさん食べればいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、体内に貯蔵できるグリコーゲン量は限度があります。カーボローディングは、運動や食事調整によって一度体内のグリコーゲンを減らした状態から炭水化物(糖質)を一気にたくさん摂取することで、リバウンド効果をうまく使って一時的に体内のグリコーゲンを増やすやり方なのです。

しかも、カーボローディングはアスリートだけが行える特別なものではなく、誰もが行うことができる方法です。長時間スタミナが必要になるスポーツに取り組んでいる方、もっと持久力が欲しいという方は、ぜひカーボローディングを取り入れてみましょう。ただし、長時間の運動を伴わないカーボローディングは、ためた炭水化物(糖質)を消化することで負荷がかかるため、内臓に大きな負担をかけます。あくまで、長時間にわたる運動で多量の炭水化物(糖質)を消費する場合に行うようにしましょう。

炭水化物(糖質)は、
体を動かすのに不可欠な
エネルギー源!

カーボローディングで
体はどう変化する?

カーボローディングを取り入れると、体はどう変わっていくのでしょうか。主な変化は、先ほども述べたように、持久力の向上です。そもそもは1960年代に行われた食事と運動を組み合わせた研究により、グリコーゲンに超回復(一度低下したものが以前より良い状態で回復すること)が生じるという結果が明らかになったことから、カーボローディングが広まっていきました3)。実際にカーボローディングを行うと、一時的に体内のグリコーゲン貯蔵量が増え、運動終盤にスタミナ切れしてしまう、という事態を防ぐことができます4)

最近では方法も改良され、より内臓に負担がかかりにくく、かつ同じようにグリコーゲン貯蔵量が増やせる摂り方も広まっており、プロのアスリートの世界では、サッカーやバスケットボール、水泳など持久力が必要な競技で積極的に活用されています。蓄えられるグリコーゲンには限度があり、筋肉内に蓄えられるグリコーゲンは100~400g、肝臓には90~150gといわれています5)。何もしていない状態で本番に臨むよりも、カーボローディングを行うことで、限度いっぱいまでグリコーゲンを体内に貯蔵することにより、スタミナ切れを防ぐのです。実際にカーボローディングを行うことで、何もしないときに比べ筋肉内および肝臓に蓄えられるグリコーゲンが2倍ほど増えるという研究結果もあります6)7)8)

また、持久力の向上だけでなく、体を大きくすることにもカーボローディングは役立ちます。炭水化物(糖質)は体内に水分を引き込みます。その分大きくなり、減量時にしぼんだ筋肉を一時的に大きくすることができるのです。

カーボローディングは、体を大きくさせるボディビル競技はもちろんですし、ボディビルよりスマートなプロポーションが評価される、いわゆる逆三角形の美しい細マッチョを競うフィジーク競技に興味のある方にとっても効果的。うまく利用することで、美しく張りのある筋肉に仕上げることも可能なのです。

  • 1) 笹川スポーツ財団. ジョギング・ランニング人口. 2018-8-10.
    https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/data/jogrun_9818.html, (accessed 2021-8-3).
  • 2) 国土交通省北海道開発局. サイクルツーリズムを取り巻く環境. 2017-2-24.
    https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/dou_kei/splaat000000i6wl-att/splaat000000i6z2.pdf, (accessed 2021-8-3).
  • 3) Bergström J, and Hultman E. Muscle glycogen synthesis after exercise: an enhancing factor localized to the muscle cells in man. Nature. 1966, 210:309-310.
  • 4) 公益財団法人日本スポーツ協会. 公認スポーツ指導者養成テキスト・ワークブック共通科目III. 2005年初版, 2021年第20刷, p.38-39.
  • 5) 金子ひろみ. スポーツ選手の食事法. 独立行政法人農畜産業振興機構. 2010-3-10.
    https://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0106b.htm, (accessed 2021-7-1).
  • 6) BergströmJ. et al. Muscle glycogen and physical performance. Acta Physiol Scand. 1967, 71:140-150.
  • 7) BergströmJ. et al. Muscle glycogen synthesis after exercise; an enhancingfactor localized to the muscle cell in man. Nature. 1966, 5033:309-310.
  • 8) BergströmJ, Hultman E, Roch-Norlund AE. Muscleglycogen synthetase in normal subjects. Basal values, effect of glycogen depletion by exercise and of a carbohydrate-rich diet following exercise. Scand J Clin Lab Invest. 1972, 29:231-236.

フィジカルトレーナー/スポーツ振興・指導講師

和田拓巳