抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」が
ニューノーマルな時代の“常識”となる!

抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」がニューノーマルな時代の“常識”となる!

NBCメッシュテックが独自に開発した
一価銅化合物を活用した抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、
世界中で大きな注目を集めている同技術は
どのような経緯で開発され、進化を遂げてきたのだろうか。
開発担当である長尾さん、藤森さんに聞いた。

長尾 朋和、藤森 良枝長尾 朋和、藤森 良枝

PROFILE

株式会社NBCメッシュテック

研究開発本部 創発研究センター センター長

長尾 朋和 (左)

2010年入社。大学では生体医工学を専攻し、前職では自己免疫性血管炎の研究に従事。入社後は、抗ウイルス加工不織布を応用したメディカルデバイスの開発を担当し、その後「Cufitec®」製品の開発リーダーとしてチームをまとめる。2021年からセンター長に就任。

研究開発本部 創発研究センター 担当課長

藤森 良枝 (右)

2008年入社。大学では繊維工学を専攻していたが、入社後間もなく抗ウイルス・抗菌材の基礎研究に従事し、その研究が抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」となる。その後「Cufitec®」使った商品企画にプロジェクトリーダーとして参画。現在は樹脂材料の設計・評価まで行う。

小麦粉が付着しないメッシュから生まれた
“抗ウイルス・抗菌性”という発想

インタビュー画像インタビュー画像

世界最先端のメッシュテクノロジーを有するNBCメッシュテックが独自開発した抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」。同技術が世界中から大きな注目を集めたきっかけが、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大だった。それまで年間50件程度だった問い合わせ数は、半年で1,000件超に急増し、製品によっては売り上げが1,000%アップ。さらに、2020年11月には、新型コロナウイルスに対して短時間での一定の不活化効果を示すことを確認し、発表した。こうしてコロナ禍で一躍脚光を浴びた「Cufitec®」だが、実はその誕生は2009年頃までさかのぼる。

当時、NBCメッシュテックは最先端のメッシュテクノロジーを活かした新規市場の開拓をめざしており、メッシュの表面を改質することで高機能化する技術「Nafitec®」を開発。砂ぼこりや小麦粉が付着しないメッシュや汚れない防虫網を製品化していた。その過程で「抗菌・抗カビ性」を持たせたメッシュにもニーズがあることが分かっていたため、抗菌性や抗カビ性を評価できる実験室を設置し、長尾さん、藤森さんが中心となり、菌・カビからウイルスまで範囲を広げた研究開発をスタート。これによって一価銅化合物を活用した革新的な抗ウイルス・抗菌技術「Cufitec®」が2009年に誕生した。

「Cufitec®」の特長は、従来からよく知られている銅の効果による抗菌効果に加え、活性酸素の中で最も早く有機物と反応する「ヒドロキシラジカル」を発生させることで、「ウイルスの種類に関係なく」「早く」「良く」効くことにある。

「アルコールや次亜塩素酸ナトリウム液のような液体の消毒・除菌剤は、使用直後の性能は高いものの、効果は一時的です。これに対し、『Cufitec®』は、表面を改質する固体の抗ウイルス剤であるため、固定化した場所で機能を発揮し続ける点に優位性があります」(長尾さん)

「『Cufitec®』で使用している一価銅化合物は、素晴らしい特性を持っている一方で、さまざまな材料すべてと相性が良いわけではなく、変色しやすかったり、安定保存が難しかったりと、少し癖のある素材です。現在も続けている改良では、そうした“癖”に悩まされることもありますが、難しい課題ほど解決できた時の達成感は大きいので、日々、やりがいを実感しながら研究を重ねています」(藤森さん)

最終製品から加工材料まで――幅広い分野に“清潔・安心・快適”を提供

レーヨン(再生繊維)の不織布から始まった「Cufitec®」は、マスクやカウンタークロス、ふき取りシート、防護服などで製品化。2016年からは最終製品の製造・販売にとどまらず、加工材料としての可能性を模索し始め、着実に活用できるシーンを拡大し続けている。

現在は、液体中にナノ粒子分散した「Cufitec®」をベース塗料に混合することで、マスクなどに使われるポリプロピレンの不織布やPET・オレフィン系のフィルムに塗布できるようになったほか、顧客の希望に合わせて「塗料」として提供することも可能となった。

また、こうした表面加工や加工剤の提供だけでなく、「樹脂に練り込みたい」というニーズに応えるために、ポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂に混ぜることが可能なペレットも提供している。

「新型コロナウイルス感染症の影響によって、世界中で抗ウイルス性を持つ製品の開発が拡大したことでさまざまな素材への展開が加速し、より多くの材料に塗布・練り込みできるようになってきています」(藤森さん)

さらに、こうした研究開発と併行し、「Cufitec®」の高い性能と信頼性を国内外に広く知ってもらうために米国食品医薬品局(FDA)の「医療機器マスクとしての認証」を取得する取組みを推進。2019年1月には「Cufitec® Surgical Mask」が米国食品医薬品局における抗ウイルス加工サージカルマスク(クラス2,510(k))の医療機器の認証を日本企業として初めて取得した。

“Cufitec® inside”をキャッチフレーズに
世界の抗ウイルス・抗菌分野を変えていく

インタビュー画像

現在、NBCメッシュテックは、FDAの認証を足掛かりとして、世界各国に「Cufitec®」を素材として提供する取組みを積極化している。海外展開にあたっては各国・各地域の規制が大きな課題となるが、各国において「Cufitec®」を材料登録するなど、着実かつ計画的な取組みを進捗させるとともに、「Cufitec®」の用途拡大や抗ウイルス・抗菌作用の向上を目的とした研究開発も継続している。

さらに今後、医療現場のような高度な清浄性が求められる環境だけでなく、多くの方が手を触れる環境も含む幅広い領域をカバーできる素材として世界中に清潔・安心・快適を提供すること——いわば“Cufitec® inside”を常識にしていくことをめざしている。

「今後は、国内だけでなく、海外の企業や大学とも共同開発や研究をして、“Cufitec® inside”を実現させるのはもちろん、一人の研究者としてどんどん新しい視点やアイデアを盛り込んで挑戦を続けていきたいと思っています」(藤森さん)

「最近は、お客様と一緒に開発を進める機会が増えてきていますので、それぞれのお客様が使いやすい形態の材料を提供していくことが目下のテーマです。将来的には、目に見えないウイルスや細菌に対する効果を“見える化”することで、環境の清潔性をモニタリングしながら、よりきめの細かいサービスを提供していくことをめざして、研究開発に注力していきたいと考えています」(長尾さん)

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