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ブランディングディレクター福田春美さんの
スイッチを切り替える7つのメソッド

人生いろいろあるもので、嫌なことがあって気分がふさぐこともあるし、なんとなくやる気が出ないこともあれば、仕事モードから抜け出せずリラックスできないこともある。だからこそ、自分のオン/オフを切り替える方法をいくつか知っていることが、健やかに暮らすための大きな助けになります。

そこで、ブランディングディレクターとして活躍している福田春美さんに、スイッチを切り替えるための7つのメソッドを教えていただきました。プレッシャーのかかる仕事を抱える多忙な日々を、機嫌よく過ごす秘訣とは?

福田春美 福田春美

プロフィール
福田春美
ブランディングディレクター。ライフスタイルストア、ホテル、プロダクト、企業のプロジェクトなどのブランディングを手がける。趣味は料理と旅。著書に自身の生活の様を綴った『ずぼらとこまめ』(主婦と生活社)がある。雑誌『RiCE』で「おいしいユリイカ」を連載中。

1 お茶を淹れる

「数年前、整体の先生に「仕事で脳を使った興奮が、ずっと残ったままになっていますよ」と指摘されました。確かにいつも何かに追われている感覚があって、心がざわざわしていたんです。治したかったけれど、どうしていいかわからない。ところがある時、旅先で中国茶を飲んだら、驚くほどストンと気が鎮まりました。中国茶のお作法はとても自由で、そんなところが合っていたようです。それからは本や動画を参考にしながら、独学で楽しんでいます。日本の作家さんの器や海岸で拾った石、フランスのトレーなど、自分の好みで道具を組み合わせるのもとても楽しくて。落ち込んでいる時も、道具をセッティングするだけで気持ちが弾みます」

2 ノートに思いを書き出す

「子どもの頃から、なにかとノートに書き出す癖があります。今も、仕事の構想やアイデア、悩み、いつかやりたいことなど、なんでも書き出しています。いつも持ち歩いているのは、手帳に挟めるB5サイズのノート。打ち合わせの準備や会議の内容などを書いています。A4サイズのノートは、もっと雑然としたことを書く用。朝、起きた時にアイデアが浮かぶことが多いので、枕元にも置いています。文字とイラストでとりとめもなく書くことで、自分の考えを整理できるし、自分の立ち位置や暮らしを俯瞰することができる気がします」

3 小麦粉料理を作る

「今日の午後は大事なプレゼンの提出締め切りなのに、まだ企画書がまとまらない…。そんな状況になると、なぜだか水餃子や手打ちパスタを作り始めることがよくあります。小麦粉と水を混ぜた生地をこねていると、その感触にすごく癒やされるんです。最近始めた陶芸でも、土を練っている時に同じようなことを感じました。生地をこね終わる頃には気持ちが落ち着いていて、行き詰まっていた考えがまとまったり、新しいアイデアが浮かんだりする。自分でもこんなことやってる場合かな?と思うけれど、机に向かって焦っているよりずっと効率的なのです」

4 プチトリップをする

「疲れがたまった時や元気がない時こそ、思い切って出かけます。例えば横浜の中華街や、イスラム横丁や韓国料理街のある新大久保へ。まるで外国旅行をしているかのような異国情緒あふれる街で、外国のスパイスや食材を買っていると、すごく元気がわいてくるんです。もともと旅が大好きなので、旅気分を味わうことで充電できるのかも。時には箱根のクラシックホテルでお茶をしたり、千葉の海沿いをドライブして魚を買ったり、那須のギャラリーでアートを見たり。探してみると、旅したい気持ちを満たしてくれる場所は都内近郊にもたくさんありますよ」

5 自家製シロップなどを仕込む

「忙しい時やストレスがたまってくると、面倒な料理をしたくなります。無心になれることを求めているのか、作業に没頭しているともやもやが晴れてすっきりするみたい。最近はカルダモンやクローブ、唐辛子、生姜、ジュニパーベリーといった数種類のスパイスとレモン、きび砂糖を水で煮込んだ自家製のシロップをよく作っています。ホールスパイスをつぶしている時や、煮込んでいる時の香りもいいし、完成した時に達成感もある。でき上がったシロップは、お湯やミントティーで割っていただくと体がポカポカしてきて、免疫力が上がる気がします。この1杯が、朝のやる気スイッチにもなっています」

6 生活音を聴き続ける

「自宅に1人でいる時は、音楽よりも生活音を聴くほうが好き。やかんでお湯を沸かしている時のシュンシュンという音や、野菜を切っている時のトントントンという音、炒める時のザーッという音、浄水器の水が落ちる音などをぼーっと聴いていると、集中力が高まってくるんです。最近は流行なのか、生活音を重視した動画が多く配信されていることもあって、検索するのが楽しい。仕事中は特に、アジアの屋台の映像とか、誰かが料理しているだけの動画などを流していることが多いですね」

7 睡眠は自分のペースで
好きなように

「健康のために睡眠が大切ということはよく言われていますが、質のいい睡眠を決まった時間にとらなきゃいけない、と思うと、それが逆にストレスになることも。私は忙しい時は2、3時間しか眠れないことも多い一方で、仕事が落ち着くと3日間くらいずっとベッドでダラダラしています。というのも、大きな仕事を抱えている時は常に脳がフル回転しているので、寝ようと思ってもなかなか眠れません。そんな時は無理に眠ろうとせず、起きて別のことをします。でも脳のガスぬきも必要なので、時間ができると、好きな映画や動画を見ながら一日中ベッドでうとうと、ダラダラ。これは私が長年の経験から体得した、自分なりのペースなのです」

福田さんの7つのメソッドは
心理学的にも効果的?

臨床心理士の宮本典子さんに、福田さんの7つのメソッドについて、心理学的観点から検証していただきました。

「鬱々とした気持ちを忘れたり、集中しすぎてしまった時にリフレッシュしたり、福田さんは気持ちの切り替え方をよくご存じ。特にストレスに対する対処法(コーピング)を、具体的にたくさん持っているところがいいですね。

実はストレスってまったくの悪者ではないんです。筋トレが、筋肉に負荷(ストレス)をかけることで強くすることと似ていて、人の心も若干のストレスをかけることで強くなっていく。負担がかかりすぎるのはよくないけれど、多少のストレスに対処することで耐性ができていくんです。

ストレスへの対処法には、認知的コーピングと行動的コーピングの2種類があります。認知的コーピングは、解決できない問題に対して考え方をかえるという対処法。一方、自分なりのアクションを起こして対処するのが行動的コーピング。あくまでどんなことが効果的なのかは人によりますが、耐性をつけるには、福田さんのように自分なりのコーピングをたくさん持っていることが大切なのです。

例えば、“今、ここ”に集中することで先の不安や後悔から距離を置きましょう、ネガティブな感情に支配されないように“今、ここ”に意識を向けましょう、という方法が、最近話題になっているマインドフルネス。見る、触る、嗅ぐなどの五感に気づきを向けるというワークがあるのですが、福田さんにとって中国茶を淹れる、生活音に耳を澄ます、小麦粉の感触を楽しむということは、“今、ここ”に集中するためのワーク、マインドフルネスを実践しているのだと思います。ノートに書いたり話をしたりすることで、自分の感じているストレスなどを可視化し、客観視することにも意味があるし、気が鬱々としてきたら場所をかえるということも、気分転換に効果的。プチトリップもいいし、隣の部屋に行くだけでもいいんです。

睡眠の重要性はみなさま、よくご存じの通りです。ただし、ショートスリーパーの人もロングスリーパーの人もいる。自分にとってのよい睡眠を知っていることが大事です。福田さんは、自分が機能するための睡眠ペースを知っているから大丈夫。自分が眠れないことを受け入れることで、焦りが消えて眠れるようになることもあります」

プロフィール

宮本典子

臨床心理士、公認心理師。都内精神科クリニック、中・高・大学のスクールカウンセラー、企業の産業カウンセリングなど、20年以上、さまざまな場所で幅広い世代を対象に心理臨床経験を積んでいる。

  • 記事制作/マガジンハウス「&Premium」編集部 出演/福田春美 解説/宮本典子 撮影/今津聡子 取材・文/藤井志織