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アクセサリーデザイナー山本亜由美さんの
リフレッシュのための7つのメソッド

忙しい日々を送っている現代人にとって、日常的にリフレッシュできることはとても重要。だけどその方法は人それぞれで、ゆっくり眠るという人もいれば、旅に出たり、音楽を聴いたりするという人もいるかもしれません。

アクセサリーデザイナーとして活躍している山本亜由美さんは、自宅で集中して作業をするため、終日、人と喋らずに過ごすこともあるとか。そんな山本さんのリフレッシュ方法は、心や体を休めるよりも、とにかく好きなことを夢中ですること。山本さんのオフタイムをととのえるための7つのメソッドをご紹介します。

山本亜由美 山本亜由美

プロフィール
山本亜由美
証券関連会社に勤めながら、独学でアクセサリーの制作を始め、1999年にアクセサリーブランド〈murder pollen〉を設立。植物や昆虫、動物などをモチーフに、一点もののアクセサリーを作っている。作品展での植物を使ったインスタレーションは圧巻。
http://www.murderpollen.jp/ Instagramは @leonardo_abc_

1 凝った料理を作る

「仕事が一段落した時、その仕事が大変であればあるほど、同じくらい大変なもの作りに集中したくなります。ものを生み出すことが好きでやっている仕事だけど、仕事となると作る量や売り上げのことも考えなきゃいけない。趣味ならばひたすら没頭できるから、単純に楽しいんです。編みものや縫いものをすることもあれば、ひたすら手間のかかる料理を作ることもあります。数日かけて煮込みをしたり、ムール貝にピラフを詰めたり、小麦粉にマッシュポテトとチーズを混ぜ込んでパンケーキを作ったり。夢中で料理をしているうちに、いつしか頭がすっきりしています」

2 花を買って飾る

「昔からとにかく花が大好きで、お金があればあるだけ買いたいくらい。出先で見かけるとつい買ってしまうので、部屋には常に花とグリーンがいっぱいです。好きな花にあふれた空間は居心地がいいし、元気がわいてくる。買うのはいつも近所の花屋さんで、1種類ずつ生けるのが好きです。キクやユリのような見慣れた仏花でも、それらがたくさん部屋にあるとイメージが変わってどことなく幻想的な雰囲気に。枯れてしまってもその造形が好きなものは、壁や天井に飾っています。生花だけでなく鉢植えでもいろいろと育てていて、植物の世話をすることで、仕事の興奮を鎮めているのかもしれませんね」

3 猫の存在を感じる

「紅子という猫と10年ほど一緒に暮らしていて、その存在にいつも癒やされています。かといって、猫グッズを集めることもなければ、紅子も私に抱っこをねだるわけでもありません。だけど部屋のどこかにいるという気配を感じるだけで安心するし、気持ちの支えになってくれています。仕事中は一人で黙々と作り続けているので、気づいたら今日はひと言も発してない! ということも。そんな時も紅子となんとなく会話をすると、ほっとして気分が落ち着きます」

4 漫画を読む

「時間ができた時の楽しみといえば、漫画! 気分転換というどころではなく、何十冊という量をひたすら集中して読み続けます。“人をダメにするソファ”と呼んでいるリクライニングチェアに寝そべって、傍らにお茶とスナック菓子を置いて、全巻を一気に読む。時には三日三晩読みふけることもあって、『仕事で疲れているのになぜそんな無茶を』と驚かれることもあります。でもこの至福の時間があることで頭が切り替わって、次の仕事へのエネルギーがわいてくるんだと思います」

5 1日に何度もお風呂に入る

「細かいビーズや石を扱う仕事なので、目は疲れるし、肩は凝る。さらに仕事が終われば、凝った料理をしたり漫画をひたすら読んだりと体を酷使するので、そのままだと疲れるいっぽうです(笑)。そこでお風呂に入ることで、体をほぐしています。とても効果的なので、1日に3回以上入ることもあるくらい。42℃くらいの熱めのお湯をさっと浴びて、一気に体を温めて汗をかき、凝りをほぐす。時にはヘッドマッサージをしたり、大好きな香りのアロマオイルを肩にたらして軽くマッサージしたりすることも。気分もさっぱりして、また作業に向かうことができるんです」

6 散歩に行く

「制作期間中はぐーっと集中したいので、人に会ったり、出かけたりすることはあまりしません。作業の流れやアイデアの勢いが止まってしまう気がして。唯一、食料品の買い出しには行きますが、その道中にある公園を散歩することが密かな楽しみなんです。一見普通の公園だけど、植物好きの私にとっては宝箱のよう。秋にはキンモクセイの大木から落ちる花をいただいてはちみつに漬けたり、春にはタンポポのつぼみを摘んで酢漬けにしたり。あそこにはヤマモモが、ドクダミならあの木の陰にと、頭のなかにだいたいの植物マップが入っています。散歩しているだけで楽しくなって、疲れが回復していきます」

7 小さな買い物をする

「ストレスを買い物で発散するという人は多いと思いますが、私もさんざんやってきました。ただ、洋服などの大きな買い物は後で『やめればよかった……』と反省することも多くて、それがまた新たなストレスになってしまう。だから今は、近所のホームセンターや八百屋さんでの小さな“大人買い”を楽しんでいます。外国で見かけるような小粒の果物や、はっとするような美しい色の野菜、珍しい調味料などを好きなだけ買ってストレス発散。見ているだけでウキウキするものたちを使って料理するのもまた楽しいんです」

山本さんの7つのメソッドは
心理学的にも効果的?

臨床心理士の宮本典子さんに、山本さんの7つのメソッドについて、心理学的観点から検証していただきました。

「山本さんは自分が好きなものがとてもはっきりしていて、それらを見たり、触れたりすることでほっとする、ということを知っている。ストレスに対する対処法(コーピング)が上手にできていると感じます。後悔しないように小さな金額の買い物でストレスを発散する、ということも、自分のことをよくわかっているからこそ。日常的にストレスコーピングを取り入れていて、セルフケアが上手ですね。

疲れている時に、あえて凝った料理を作ったり、大量の漫画を読んだりということも、実はマインドフルネスにつながっています。マインドフルネスとは、簡単に言うと“今、ここ”に集中することで先の不安や後悔から距離を置きましょう、“今、ここ”に意識を向けることで心を安定させましょう、という方法。人は常に、明日の仕事のことや、先週あった嫌なことなどについて考えてしまいがち。“今、ここ”に集中することはそう簡単ではないのですが、山本さんのように集中して無我になるということは、マインドフルネスにとても効果的なのです。心が安定すると、自身の本来の創造性や知性につながることができると言われています。なにかに夢中になることが、次なる創造性を生む。徹夜して漫画を読むなんていう一見、疲れる行為も、山本さんにとっては座禅と同じような効果があるのではないでしょうか。

お風呂に入ることは、筋肉を弛緩させる効果がありますね。体は心と密接につながっているので、自然と心もリラックスできるのです。また、水で流すというイメージも、疲れを流していくような心理的な効果があるのかもしれません。

アニマルセラピーというものがあるくらいですから、動物の存在が人に与える影響ははかりしれません。ただ、山本さんにとっての猫の存在は、アニマルセラピーとは違った意味があるように思います。人間は社会的な生き物で、一人では自分の存在を確認することはなかなか難しい。だから部屋の中に自分以外の存在を感じること、自分以外の存在に想いをはせることで、自分の存在を確認し、安心を得ているのかもしれませんね。

なにがストレス軽減になるかは本当に人それぞれで、自分にとってのストレスコーピングを知っていることが大切。そのためには、自分と会話をして、自分に必要なことを知ること。時には人のアイデアを聞いて、いろいろなトライアンドエラーを繰り返すことも大切なことなのです」

プロフィール

宮本典子

臨床心理士、公認心理師。都内精神科クリニック、中・高・大学のスクールカウンセラー、企業の産業カウンセリングなど、20年以上、さまざまな場所で幅広い世代を対象に心理臨床経験を積んでいる。

  • 記事制作/マガジンハウス「&Premium」編集部 出演/山本亜由美 解説/宮本典子 撮影/山田 薫 取材・文/藤井志織