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2022.01.25 Tue

あなたの眠りは大丈夫?眠りのプロに聞く安眠法 ②(全6回)

快眠のカギ「眠りはじめの3時間」をとことん深くするには?

睡眠の質は、眠りはじめの3時間がいかにぐっすりと快眠できているかに左右されます。では、その入眠から3時間の眠りをどうすれば深くできるでしょうか。なかなか寝つけない、熟睡感がない、という方は、ぜひ1度、寝室の照明や音、温度などを見直してみましょう。より良い眠りは、まず睡眠環境を整えることから。どれもちょっとした工夫で改善できますよ。

睡眠の質は、眠りはじめの3時間がいかにぐっすりと快眠できているかに左右されます。では、その入眠から3時間の眠りをどうすれば深くできるでしょうか。なかなか寝つけない、熟睡感がない、という方は、ぜひ1度、寝室の照明や音、温度などを見直してみましょう。より良い眠りは、まず睡眠環境を整えることから。どれもちょっとした工夫で改善できますよ。

脳を"おやすみモード"に
切り替える光の役割

本来、私たちの体は、日がのぼって明るくなると活動モードになり、日が沈むと休息モードになるようにできています。しかし夜になっても昼間のように明るい光を浴びていると脳が昼間だと勘違いし、なかなか"おやすみモード"に切り替わりません。夜がふけてからは、スムーズな入眠に誘導する照明を意識することが大切です。

睡眠に関わる光の要素には「光の色=色温度」「明るさ=照度」があります。主に蛍光灯は「色温度が高い青白い光」、白熱灯は「色温度が低い赤い光」なので、夜に適しているのは白熱灯と覚えておきましょう。また、夜に500ルクス以上の光、しかも色温度の高い青白い光を浴びると、睡眠ホルモン「メラトニン」が減少してしまいます1)夜を過ごす部屋は、明るさを調節できる照明器具にして一段暗くしたり、間接照明に切り替えたりするなど、暖色系で100ルクス程度の明るさ(一般的な住宅の内玄関の明るさ)になるように心がけましょう。

そして就寝1時間前には、テレビ、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの電源をオフ!液晶画面から発せられるブルーライトは太陽光に多く含まれている波長です。脳が「昼だ!」と認識し覚醒するため、眠れなくなってしまいます。特にスマートフォンは小さな画面に集中することで交感神経が優位になり、見れば見るほど快眠が遠のいてしまいます。

いよいよ眠りにつく際は、照明はすべてオフに。諸説ありますが、人は目を閉じていても光を感知してしまうので、真っ暗な状態が理想的です。ただし、暗闇が苦手な人は、不安感で逆に脳が興奮状態になってしまうので、ほんのり小さな明かりならつけていてもOKです。その場合も、光源が目に入らないようにすることで睡眠の質は維持できます。例えば、光源が壁の下の方にあたるよう位置を調整する、床に近いコンセントに差し込み式の小さな照明をつける。月が足元を照らしているような、ほんのりとした明るさが良いでしょう2)3)

ちょっと工夫
🌙夜になったら照明は控えめに。暖色系にチェンジ。
🌙就寝1時間前にテレビ、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの電源をオフ。
🌙就寝中は真っ暗がベスト、つけるなら光源が目に入らないように工夫を。

生活騒音を消し、
静けさを"演出"する

人間が熟睡できる理想的な環境は、図書館くらいの静けさ(約40デシベル以下)といわれています4)。夜間、静かになるとエアコンの室外機や冷蔵庫などの重低音、時計の秒針の音などが、かえって気になるものです。耳栓をする、静音タイプの電化製品にする、厚手の遮音性のあるカーテンをつける、デジタル時計を使う...などの方法で、こうした「生活騒音」を1つずつ減らしていきましょう。

どうしても消せない生活騒音が気になる場合は、小音量で音楽をかけることでマスキングすることができます。静かなピアノ曲、ヒーリング音楽、さざ波やせせらぎなどの自然音は気持ちを落ち着かせ、リラックス効果を高めてくれますし、穏やかな曲調のクラシック音楽には自律神経を整え、眠りを誘う効果があるので、無音では逆に眠れない、という人にもおすすめです。特にヒーリングミュージックと呼ばれる音楽(モーツァルトや自然環境音)には、振幅や周期のゆらぎのスペクトルが1/f特性を示す「1/f ゆらぎ」が含まれていることが知られており、この1/fゆらぎ音を聴くと脳内がα波の状態になり、リラクゼーション効果をもたらすと発表されています5)

ただし音楽を流すのは就寝後1時間まで。かけっぱなしにすると睡眠中、ずっと脳が刺激され続けることになります。必ずタイマーをセットして1時間後にオフしましょう。

どんなに良いとされる音楽でも、自分が不快に感じるなら「騒音」です。あくまでも自身が心地良く眠ることができるかを基準に選んでみてください。

ちょっと工夫
🌙遮音性の高いカーテンや耳栓で外の音を
シャットアウト。
🌙寝室にある家電や時計を静かなものに替える。
🌙心地良いと感じる音楽を1時間だけ流す。

冬はポカポカ、夏はひんやり 
季節に応じて温度を調節

冬に適した寝室の環境は、室温13~21℃、湿度50~60%が目安6)。エアコンは温度を一定に保ち、タイマー機能も使えるので便利ですが、温風が苦手な方はオイルヒーターなどの風が出ない暖房器具を選びましょう。空気が暖まると湿度が下がりやすくなるので、加湿器を使ってケアするのも大切です。

しかし、いくら室温が暖かくても、布団が冷え切っていれば、せっかくの眠気も覚めてしまいます。就寝30分前に電気毛布や布団乾燥機などであらかじめ温めておくのがおすすめです。暖かく気持ちが良いだけではなく、背中が温まることで全身の血行が良くなり、深い眠りに入りやすくなります。ただし電気毛布は乾燥しやすく低温やけどの原因にもなるので、入ったらすぐに消すことを忘れないで7)

また、電気毛布を使うほどでもないという方でも、シーツや敷パッドを起毛素材などにして、触感的にヒヤッとしないものを選ぶようにしましょう。化学繊維は熱がこもるので、吸汗性・保湿性の良いコットン素材を選ぶのがポイントです。掛け布団は肩から冷気が入らないように、体に沿うものが理想的。肩や首の周りに柔らかなバスタオルを補助的に使っても構いません。重い掛け布団やパジャマの厚着は圧迫感があり、寝返りも打ちにくくなるので、快眠を妨げます7)8)

夏に適した寝室の環境は、27℃前後、湿度は50~60%が目安9)。年々猛暑が厳しくなり、熱帯夜も長くなっています。部屋の気密性も高く風が通りにくいので、熱中症対策のためにも我慢せず、エアコンを活用しましょう。おすすめの使い方は、就寝30分前に設定温度を25℃にし、風量は強でスイッチオン。ベッドに入るときに27℃に上げて風量を微か弱に切り替えます。

夏は体に熱がこもりがちなので、頭と背中が涼しく感じるコットンや麻、い草、接触冷感素材の寝具を活用するのもポイントです10)11)

ちょっと工夫
🌙温湿度計を置いて快適温湿度を確認しよう。
🌙冬は保温性、夏は爽快感ある素材の寝具をセレクト。
🌙暖房でも冷房でも、風が直接あたらない工夫を。サーキュレーターや扇風機で空気を循環させて。

このシリーズ(全6回)の他の記事を読む

①それ間違っているかも...あなたの"睡眠常識"は大丈夫?

③朝からシャキッと目覚める方法

④眠れない・・・とお悩みの方にも!毎晩スーッと寝つく方法

⑤どうしても眠れない夜のお助け対処法

⑥睡眠に役立つ"快眠食材"とは?

  • 1)白川修一郎, 福田一彦, 堀忠雄. 基礎講座 睡眠改善学 第2版. 日本睡眠改善協議会, 2019, p.61.
  • 2)友野なお. ねこ先生クウとカイに教わる ぐっすり睡眠法. KADOKAWA, 2018, p.62-63.
  • 3)友野なお. 眠るだけビューティー法則 眠活 1日9時間のキレイの近道"睡眠美容術". 中央公論新社, 2011, p.52-53, p.62-63.
  • 4)久野和宏, 林顕效, 池谷和夫. 睡眠中の音環境の実態とその分析. 日本音響学会誌, 1981, p.430-436.
  • 5)佐巻優太, 森亮徳, 渡邉志, 中川雅史, 鎌倉友男, 白濱成希, 宮田統馬, 冨田雅史, 森幸男. 1/f ゆらぎ音のリラックス効果に関する一検討. 第28回バイオメディカル・ファジィ・システム学会年次大会 講演論文集, 2015, p.103-104.
  • 6)睡眠環境と寝具『睡眠編』. 一般財団法人日本ふとん協会, p.77.
  • 7)友野なお. ねこ先生クウとカイに教わる ぐっすり睡眠法. KADOKAWA, 2018, p.70-71.
  • 8)友野なお. 毎朝、目覚めるのが楽しみになる大人女子のための睡眠パーフェクトブック. 大和書房, 2017, p.69-71.
  • 9)Takuko YANASE. A Study on the Physiological and Psychological Comfort of Residential Conditions. Journal of home economics of Japan. 1998, 49(9), p.975-984.
  • 10)友野なお. 眠るだけビューティー法則 眠活 1日9時間のキレイの近道"睡眠美容術". 中央公論新社, 2011, p.82-85.
  • 11)友野なお. ねこ先生クウとカイに教わる ぐっすり睡眠法. KADOKAWA, 2018, p.72-73.

<監修>

友野なお

睡眠コンサルタント/(株)SEA Trinity代表取締役/日本公衆衛生学会/日本睡眠学会/日本睡眠環境学会 正会員/産業心理カウンセラー